スマホ彼氏

ぐらにゅー島

スマホ

私の彼氏はスマートフォンです。

 いや、少し語弊があるかな。私の彼氏はスマートフォンの中にいるのです。所謂、ネット恋愛ってやつかな。ネット恋愛を否定する人も多いけど、しょうがないじゃん。ネットの人を好きになったんじゃなくて、好きになった人が偶々ネット上の人だったんだから。

 顔も声も知りません。私が彼について知っているのは芸能人のプロフィール欄に載ってるような無機的な情報と、彼が打つ文字だけです。だから、好きな人のことを考えちゃうときに思い出すのはスマートフォンなんです。だから、スマートフォンを見るとドキドキしちゃうのです。これっておかしなことでしょうか?

 本当に居るのかすらわかんないな。スマートフォン越しの文字でしか君のこと知らないし、写真を見てもピンとこない。多分、電車で隣の席に座ってても気づかないな。隣同士に居るのに「会いたいね」なんてメールを打ってたら面白いなって思います。

 まあ、ネット恋愛なんて現実と違ってすぐに縁なんか切れちゃうんだけど。実際、私も彼には振られちゃったし。

 それでも、私の彼氏はここに居るのです。だって、彼はスマートフォンだから。

 文字だけの君しか知らない、だから、別に君じゃなくてもいいのかもしれない。

 今、私は違う人とメールをしています。どこの誰かもわからない、知らない人と。なんかそれでも、それが君な気がするのです。君とメールしてる気がしちゃうのです。

 この気持ち伝わるかな、わからないかな。とにかく君の存在はあやふやで、私はきっと未練たらたらなんです。

 だから文字の向こうに君が居るって想像しちゃう。そうだったらいいなって、少しわがまま。


 私の好きな人はスマートフォンです。だって、君との思い出を思い出すとき、思い出せるのはコレだけだったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スマホ彼氏 ぐらにゅー島 @guranyu-to-

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ