カラスは白い【朗読OK】

久永綴和

第1話

 昔から空気を読めないと言われた。

 そのせいか友人は片手で数えるくらいしかいないのだがその内の一人がこんなことを言った。

「白いカラスを見た」

 僕は白いカラスが実在していることは知っていたが、こんな所にいるはずもない。

 普段ならそう言って一蹴して終わっているところだったけど、ここのところ嫌なことばかり続いていたのでそれなら一緒にそのカラスを捕まえようと提案した。

 だが、意外なことに友人は乗り気で休日に探すことになった。

 まさか高校生にもなってこんな子供じみたことをすることになるとは思わなかったが貴重な友人を失うわけにもいかないし、特に予定もないので付き合うことにした。

 友人の手にはカブト虫で取りに来たのかと問いたくなるような網がある。

 不安しかないがとりあえず白いカラスを見たという場所まで案内してもらい、その周辺をくまなく捜索することに。

 しかし、僕は最初から見つかるはずがないと思っている。

 そして捜索を始めて一時間後にはそのことを口にしていた。

 こんなところが良くないのだろう。

 網を片手に奮闘していた友人もポカンと口を開けているではないか。

 これまでの経験則上、いくら取り繕っても傷口を広げるだけなのでその場で解散することになった。

 それからというものその友人は僕に話しかけてくることはなかった。

 また一人、失ってしまったか……とあの日の一言を後悔しながらいつもの通学路を歩いていると白い何かが横切った。

 その正体を見て僕は目を疑う。

 いるはずもないと思った白いカラスだ。

 気がつくと僕はそれを全速力で追いかけていた。

 今更、白いカラスを捕まえたところで何かが変わるわけでもないのに。

 帰宅部の僕はすぐに体力の限界が来てその場に倒れ込む。そして、まるで僕のことを嘲り笑うかのように白いカラスはどこかへと飛び去ってしまう。

 数分後、友人が倒れ込んだ僕を心配そうに覗き込んで来たので僕は彼に対してこう言った。

「白いカラスはいたよ」

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