第4話 終わりへ向かう最上階
どうすることもできず、うなだれ警察署をあとにした。
家に帰りたくても帰れない。
しかも、私じゃない同い年の知らない、おっさんの私。
もう、考えるのも嫌になった。
辛くて過呼吸になっていたのか、それともこの体の運動不足が原因なのか
息があがってまっすぐ普通に歩くのさえままならなかった。
前、住んでいた家の住所や景色がはっきり思い出せない。
「なんでこんな目に・・・」
「なんでわたしなの?」
「私が一体、何をしたっていうの?」
「・・・・・」
「よし、もう終わらせよう!」
どれくらい歩いただろうか。
とある場所が見つかった。
廃ビル。
もう、いいの。
終わらせるから・・・
そう自分に言い聞かせた。
お母さん、お父さん、そして妹に会えるのなら、今すぐにでも会いたい!
私だと、わかってもらえなくても!
けどもう、会いに行けないし、どこにいるのかもわからないし、会うことが出来ないし時代が違うと悟った。
屋上に着くと、錆びついて今にも落下しそうな、か弱く頼りない落下防止フェンスが立ち並んでいた。
ボロボロの錆びついたフェンスの穴をくぐり死を覚悟して廃ビル屋上の縁ギリギリへと立った。
強風が心の準備を待たずして身体を、さらって行こうとする。
何階建ての廃ビルだったんだろうか。
さっき下から見ていた頭上を行きかっていたであろう配達用のドローンやタクシー、エアカー、バスがずいぶん下の方に見える。
この高さでは、即死どころか原型すら留めずに跡形もなくなると下を見た瞬間に悟った。
いや、むしろ好都合だろう。
本当は、死にたくない気持ちと裏腹に顔が引きつって鼻で笑っていた。
そして飛び降りる勇気を振り絞る為に、目を閉じ自己暗示をかけた。
「3秒で飛ぶ! 3秒で必ず!」
大きく息を吸い込み
「3 2 1 」
「早まるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
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