第111話 栗凛のことかぁ~!!!!


『黄秋』


俺が住むこの国で絶大な権力を持つ四大名家の1つ

主に投資関係に特化した名家だそうだ…

その影響力は凄まじく、『秋風が吹けば屋根が飛ぶ』と揶揄されるそうで、どんな大企業でも『黄秋』がヘソを曲げると支柱が傾く程だと言われているらしい


勿論飽くまで投資に特化しているだけで、不動産業、小売業業、貿易関係、医療と様々な分野にも手を付けている事は容易に想像出来る





「そんな黄秋と、飽くまで平凡な俺…勝負にすらならないなぁ…」


そんな事をボヤキながら俺は教室でウンウンと頭を抱えて悶えていた

因みに姉さんには絶対にこの教室には来ない様に言い含めてある


もしアルス君が俺の想像する様な最悪な性格をしている様だったらカモネギ状態だ

何があるか分からない為に俺の為にも来ないでと懇願してしまった…


「夜人くん、そんなにウンウン唸ってどうしたの?」


「君に難しい顔が似合わないよ。僕で良かったら話を聞こうじゃないか」


「は、ハハ…あづみちゃん、蓮華ちゃん有難う…」


当然ながら、こんな話を彼女たちにする訳にはいかない

とうか…8割は心が折れている俺には何も言う事が出来ないのだ…



ーーーガラッーーー



「やぁ皆、お早う!!」


「…………」


そんな事を考えているとアルス君と朝焼くんが正反対な表情を浮かべながら教室に入ってきた

パッと見た所、朝焼くんの顔にケガ等は無いが…俺としてはより不安だ


「やぁ夜人くん、おはよう」


「アルス君…お早う」


俺の隣の席であるアルス君は後ろめたい気持ちはまるでない様に軽快に挨拶をして来る

ん…?これはやはり俺の早合点だったのだろうか?


「ところで今日は月さんは教室に来ないのかな?僕をこっぴどく振った君のお姉さんだけど」


あぁ…違うわ、これ

分家とは言え、名家に生まれた男としてとことん増長して悪意も何も無いってヤツだ…

息をする様に世界は自分が中心に回っているのが当たり前だと思っている状態だわ…


「あぁ~…姉さんは今日は教室に来ないと思うよ?」


「そうなんだ…残念だなぁ~…」


「……残念?」


彼のその一言に嫌な予感を膨らませる

俺のそんな表情を察しているのか察していないのか…無邪気そうにアルスは言葉を続ける


「だってさ…自分の所為で家族が生活できなくなるって…辛いだろ?月さんにそんな事実を突きつけてあげたかったんだけどなぁ~」


……麗さんの嫌な予感は当たったわ、これ

今の彼は無敵状態…誰も彼もが自分の為にある状態だわ…


俺が色々と悩んで沈黙していると、アルスは満足そうな表情を浮かべてくる

コイツ…マジで性格悪いな…

俺の中でコイツの評価がストップ安状態だわ…


「オッスオッス!!……どうしたんだ、夜人?」


「あぁ…お早う零くん」


「あ、あぁ…」


「……??零くん、どうしたの?」


「よ…夜人…お、お前…め、滅茶苦茶怖い顔してるぞ…」


零にそう言われて初めて自覚した…

あぁ、俺って結構怒っているんだって

怯えるではない、絶望するでもない…勿論遜るでもない

俺は…かなり怒っているんだな…


「そんなに怖い顔してる?」


「……初めて会った時みたいな顔してる」


「おい」


零とそんな事を話しながら打開策を必死に捻りだそうとしていた

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