第63話 努力する人はマジで偉い
(師匠…いやメイちゃんはスピードに難有り、だな)
多分秒速5cm位しか進んでいない…
だがピンポン玉を落としてから拾って3秒間待機する事を考えたらどうなんだろう?
落としてから拾うまでに3秒かかれば待機時間と合わせて30cm…
(う~ん…)
分からんっ!!
あとで本人に聞いてみよう…
「あはっ…あれ?」
りんちゃんは…落とすなぁ~~…
多分出だしの勢いが凄すぎるんだと思う
アメ車のエンジンを搭載してるかの様な勢いだからなぁ…あれじゃあ、かなりのロスになりそうだ
落ち着きのないりんちゃんが何処まで抑える事が出来るかだが…中々難しそうだ
「これくらいなら…問題ないですね」
さつきちゃんは…おぉっ!!
ピンポン玉は揺れている物の、落ちない程度のブレに収まっている
しかもスピードも決して遅くは無い!!
スプーン落としのエースとも言える出来栄えだ
「さつきちゃんって、スプーン落としが上手なんだね」
「っ!!こ、これ位っ!!手元を見ながら揺れ幅を予測すれば簡単ですっ!!」
「す、凄いなぁ…」
褒められ慣れていないのだろうか?
顔を真っ赤にして言い切る彼女を見るのは何となく初々しい…
なんだろう?姪っ子を見るみたいでホッコリするよね
だが、それはそれとして…最重要なお願いをさつきちゃんにしなければならない
「じゃあさ、僕にもコツみたいなの教えてくれない?僕どうしてもピンポン玉がスプーンから落ちちゃうんだよね…」
「っ?!!」
そう言うと思わずションボリしてしまう…
そう、さつきちゃんやりんちゃん、メイちゃんの出来を偉そうに観察しているが…一番深刻な状況なのが間違いなく俺っ!!
客観的に見ても主観的に見ても完全に俺なのだ…
「ショボリ夜人くん…可愛い…」
何か可愛いとか何とか聞こえ思わず顔を上げる
するとさつきちゃんが怒ったかの様な表情で顔を真っ赤にさせて俺を睨んでいた
あ、サーセン…完全に幻聴でした…
こんなに顔を真っ赤にさせて睨み効かせている御仁が可愛いとか言う訳ないわ…
此処は可愛さアピールではなく、誠心誠意お願いする方が賢いだろう
「このままだと僕が完全に皆の足を引っ張るから…さつきちゃん、僕にスプーン落としが上手になる方法を教えて貰えませんか?」
「…………」
駄目だよぉ…完全に睨みまくってる…
思わず「助けて~ドチャえも~ん!!」とでも言いたくなる様な睨み付けだ
しかも何にも言ってくれないし…
そんなこんなで俺はさつきちゃんに睨まれながらお昼の自由時間は終了した…
◆
◆
「よっ…はっ!!……あぁ」
今日の保育園は終了したグランドで俺は1人(厳密には麗さんと2人)で居残り練習をしていた
だが残念ながら今のところは成果は出ていないが…
実はこのままじゃダメだと結論付けた俺は、皆が帰った後にひっそりと練習をしているのだ
俺が1人で練習をしていれば、間違いなく零や皆が一緒に練習をしてくれるだろう
だが陰で頑張りたい派の俺は、零と雪ちゃんが帰り、他の皆がバスに乗り込んだタイミングで先生の許可の下で練習に打ち込んでいた
いたのだが…
「夜人様、そろそろ日も暮れます。月様も心配されるでしょうしそろそろ帰宅いたしましょう」
「…はい」
前述の通り成果は現在出ていない
そしてそのまま1日が終わるという事に歯がゆさを感じてしまう
しかしこのままだと本当に日が暮れるし、真っ暗な中で練習しても上達が見込めると思えない俺は麗さんに言われるがまま車に乗り込んだ
「夜人様、お疲れ様でした」
「…麗お姉ちゃんも有難う御座います」
「…スプーン落としは難しいですか?」
「…ですね。ちょっと自分の不器用さが嫌になります」
「…男の子で夜人様ほど努力している方も相当珍しいですよ」
自虐的な言葉を苦笑いを添えて伝えると、麗さんなりにフォローしてくれる
そのフォローが有難いが、そう言わせてしまった申し訳なさも相まって再度苦笑いを浮かべてしまう
そして何気なく窓の外へ視線を向けると…
「…っ?!う、麗お姉ちゃん、ちょっと止まってっ!!」
窓の外の公園から見知った子を発見し、思わず麗さんに声を掛けてしまった
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