第23話 まだまだ知らないこの世界の常識

「ふぃ~・・・どうなるかなぁ・・・」


保育園生活2日目が終わり、俺は車の座席に身を任せながら今日を振り返っていた

変える間際に雪ちゃんに声を掛けて次に登園するまでにお兄さんに会って貰えるか確認して貰える様にお願いした


嫌がられたりしたら気にしないで良いよとフォローはしておいたから厚顔野郎だったり、恥知らずだとは言われない・・・と信じたい


「夜人くん、どうかしたの?」


「う~ん・・・えっとね雪ちゃん、同じ班の子にお兄さんがいるんだって」


俺に全体重をかけながらもたれ掛かる月姉さんの質問に何て言えば伝わるか考えながら答えていく

時々ポロッと子供らしくない言葉がでちゃうんだよなぁ・・・

あと、俺3歳児だから月姉さんが普通に重い


「へぇ~」


「僕って僕以外の男の子って見た事無いから、会いたいなぁ~って雪ちゃんにお願いしたの」


「は?」


「今度の登園の日までに聞いてくれるみたいなんだけど、雪ちゃんのお兄ちゃんに会えるかなぁ~?って」


「は?」


「僕以外の男の子って、うぉっ!!!」


ボケ~っとしながらも月姉さんに説明していた俺は突如強い近い力で両肩を掴まれてしまいビックリしてしまう


「・・・・・・夜人くん」


「は、はい・・・」


月姉さんの言葉に思わず全身がブルリと震えた

いつかの麗さんが醸し出していたオーラは龍だった

だが、月姉さんが今現在醸し出しているオーラ、それは・・・鬼だ


前世を含めて俺には経験は無いが・・・本能で理解できる

これは逆らったらアカンやつや・・・


「雪ちゃん?のお家に・・・行くの?」


「え・・・え~と・・・雪ちゃんのお兄ちゃんが会ってくれるなら・・・」


「ダメッッ!!!」


「え~・・・」


何でよ?男に会いに行ったって良いじゃん?

この世界の所謂『普通の男』を見ておきたいという健全な欲求じゃないか

そうは思うものの、天使が瞳を潤ませるのを見て二の句が継げる事が出来なくなる


「・・・夜人くんは、雪ちゃんって子が好きなの?」


「ん~・・・好きか嫌いかで言うと好きだけど」


俺は基本的にモモンガ組のみんなが嫌いではない

というか、あれだけ親切にされて嫌いになる要素などはない


「・・・雪ちゃんと結婚するの?1番最初に?」


「結婚?!!!え・・・結婚?!!いやいやいや僕まだ3歳だよ?!結婚なんて考えた事も無いよ!!」


え?何で結婚?

雪ちゃんのお兄さんに会いに行くのが結婚の挨拶に行くとでも思ったの?

それだったら親に会いにいくでしょ?!


「・・・月様、夜人様は恐らく理解されていらっしゃらないかと。僭越ながら私が説明させて頂きます。」


車内の空気感が居た堪れなくなったのか麗さんが運転をしながらそう口を挟んでくる

それは俺からすれば驚くべき内容だった


先ず、男が女の家に行くという事は結婚を前提に交際していますよという意思表示なのだそうだ

まぁ本来ならば成人(16歳)以降に向かう場合は、だそうだが・・・

だが仮に15歳時点で女の家に行き、16歳になると同時に結婚するという事も有る為、女性宅へ行く=結婚を前提に交際していると図式が出来上がっているそうだった


因みに女性が男宅へ行く=結婚を前提に交際する意思があるという図式も出来上がっている為、男女ともに軽々と異性宅へ向かう事は先ず無いらしい・・・


いや、そんなん知らんやん・・・

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