大文字伝子が行く164

クライングフリーマン

オクトパスとの決戦(後編)

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向さやか(ひなたさやか)一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。

 江南(えなみ)美由紀警部補・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 渡伸也一曹・・・陸自からのEITO出向。GPSほか自衛隊のシステム担当の事務官。

 草薙あきら・・・警視庁からのEITO出向。特別事務官。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。

 天童晃(ひかる)・・・EITO東京本部剣道顧問。EITO準隊員待遇。闘いに参加することも。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。時々、伝子から「クソババア」と言われる。

 藤井康子・・・伝子の隣人。モールで料理教室をしている。EITO準隊員待遇。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。蘇我と結婚した逢坂栞も翻訳部同学年だった。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。

 久保田管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。

 中山ひかる・・・以前、愛宕のお隣さんだった。謎解きが得意な大学生。伝子達の後輩。

 青木新一・・・Linenを使いこなす大学生。友人の致傷事件の関係者。後に伝子達の協力者になる。

 山下いさみ・・・オクトパスの「枝」だった。拘置所に入っている筈だが?

 東山英一・・・SAT新隊長。

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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 =EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズ後方支援部隊である。=

 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


 伝子は言った。「久しぶりだな、山下。」

 皆、固唾を呑んで見守っている。

「いつ、替え玉と入れ替わった?ここに来る前に、看守の新山に借金があることと経済状況を確認した。時々入れ替わるのは無理がある。映画じゃないからな。拘置所に入った時点で入れ替わったかな?」

 黒装束のサブリーダーらしき男が近寄って来た。

 そして、頭巾を脱いだ。「やはり、こうなったか。」「やはり?先に言えよ。」「済まん、高橋。」

「山下こそがオクトパス。高橋は、一番の『枝』か。まあ、私も時々、替え玉使うけどな。」そう言って、伝子はエマージェンシーガールズの頭部部分を脱いだ。

 東栄の応援チームはもういない。SATは、隊長の東山以外は撤収していた。

 伝子は、脱いでも構わない、と判断した。

 東山が驚いた。「お前が、大文字伝子がエマージェンシーガールズの隊長だったのか?」

「ふふ。大文字伝子。最後の頼みを聞いてくれるか?まだ、あのホイッスルを吹かないところを見ると、警官隊は来ないのだろう?」

「勝負か。」「ああ。あの槍みたいな武器があるだろう。」

「EITOランスのことか?」と青山が言った。

「そう、それだ。」「心得があるのか?」「いや、あんたは?」「私もない。棒術なら多少あるが。」「じゃ、五分五分だな。」

「・・・いいだろう。」伝子はガラケーを出して、言った。「聞いての通りだ。EITOランスを、予備の分を含めて、持ってきてくれ。」

「じゃ、私が審判をしよう。」と、青山は進み出た。

 間もなく、井関がホバーバイクでEITOランスを2本、持って体育館にやって来た。

 青山は、フェンシングの要領で、2人を数メートル離してから待機させ、号令をかけた。

 30分後。体中汗まみれになった、伝子が膝を折った。

「1本!」青山は叫んだ。

 異変に気づいた、なぎさは長波ホイッスルを吹いた。

 そして、ガラケーで「救急車!」と叫んだ。飯星が脈を測った。

 井関がAEDをホバーバイクから取り出して来たが、「救急車の方が早いわ。いえ、オスプレイで運びましょう。」と言った。

 なぎさは、「ジョーンズ、着陸してくれ。おねえさまを池上病院に運ぶ。」と、叫んだ。

 あつこは、「間に合って!!と呟きながら、すぐに池上病院に連絡を取った。

「病院には、オスプレイ着陸出来るの?」と、残っていた芦屋三美が尋ねた。

「ヘリポートがあります。」と、みちるが言った。

「三美さん。」「何?」「総子には、今は言わないで。」伝子は気絶した。

 総子達、EITOエンジェルスは、さっき、東栄応援チームと引き上げたばかりだ。

 引き返せば、大阪の事件を放棄することになる。総子単独でも難しい。

 様子がおかしい事を感じた、オクトパスこと山下は、「病気のまま闘ったのか?もしかしたら、身重のまま?」と絶句した。

「そうよ。あなたの負け、よ。妊婦に負けたのよ。」と、なぎさは冷徹に言った。

 やって来た、救急車の救急隊員に、なぎさは説明し、救急車のストレッチャーに一時的に乗せ、オスプレイに運び込むことにした。

「オスプレイには、簡易ベッドが1台あります。」と、飯星は救急隊員に説明した。

「あつこ。後は頼むわ。新人2人を連れていく。」「分かったわ。」なぎさは、あつこに短く引き継ぎをした。

 なぎさは、あつこに後を託し、オスプレイに乗った。

 愛宕と橋爪警部補が警官隊共に到着した。オクトパスの部下は、大人しく待っている。

「倒れていない?」と、思わず愛宕は言った。

「闘いは闘いだが、今日の闘争は試合みたいなものだ。初めから、その積もりだったんだろう?山下。高橋。」と、あつこが言った。

 山下が話そうとした時、どこからか矢が飛んできた。咄嗟に高橋が庇った。

 青山は、インカムで筒井に連絡した。「筒井さん、刺客だ。9時の方向!」

「了解した。」と、青山のインカムの中から筒井の声が聞こえた。

 見守っていた田坂が駆け寄り、矢を確認した。

「治療はしなくていい。もう無理だ。」そう言って、高橋は絶命した。

「高橋、高橋!!・・・こいつは、身寄りがない・・・刑事さん。」

 愛宕の横から、いつの間にか来ていた久保田管理官が言った。

「了解した。後は任せておけ。お前もきっちり更正しろ。」

 愛宕は、山下に手錠をかけた。

 高橋は、警官隊が運んで行った。

 愛宕は、久保田管理官とあつこに黙礼すると、山下を連行した。

 頭上を、オスプレイが飛んで行く。

「空は、スピード違反なんてないのかしら。」そう言った下條に、あかりは、キッと睨んだ。

 あつこは「新町は、下條が可愛くて仕方ないんだな。」と言い、結城が「お前達も『義姉妹』するか?」と揶揄った。小坂だけが笑いを堪えている。

 午後7時。池上病院。手術室前。

 手術中のランプが消えた。

「大文字さんは、無事よ。でも、お腹の赤ちゃんは救えなかった。残念だわ、高遠君。」

 それを聞いた綾子は、目眩を起した。藤井が支えた。

 待合室。

 高遠は、待っていたDDメンバーとEITOメンバーに伝えた。

 皆、涙した。嗚咽は、待合室に響いた。

 同じ頃。池上家。

 いつの間にか改造されていた、池上家には、新生児室と未熟児ケースがあり、看護師の仮眠室もあった。

 流産は、表向きのことだった。予め、打ち合わせをしていて、出産後、すぐに秘密の通路を通って、移送されたのだ。

 この秘密を知っているのは、高遠、なぎさ、あつこ、管理官、理事官。後は一部の病院スタッフだけだった。これから数ヶ月、いや、何ヶ月になるか何年になるか、伝子と、子供の安全の為、隔離される。

 この赤ん坊の世話は、池上病院の看護師が三交代で面倒を見る。

 この秘密は、須藤医官、高坂管理官、飯星隊員にも知らされていない。今度の敵が、どんな敵か分からないからだ。秘密を知っている者が多ければ多い程狙われやすい。

 伝子は、かつて総子が結婚式をあげた頃、DDメンバーをわざと狙わせ、ガードしたことがあった。危険を回避する為には、作戦が必要だ。

 全ては、これからを考えて、高遠と伝子が話し合い、池上院長、理事官と決めたことだ。なぎさやあつこに知らせておいたのは、作戦上支障が出ない為だ。

 午後9時。伝子のマンション。

「婿殿。休み取ったから、当分、病院の世話は交代でやりましょ。山城君の叔父さんのように、全てを背負ってしまうと大変だから。」

「ありがとうございます。」と、高遠は神妙に応えた。

「私もいるからね。」と、藤井は、用意した、ざるそばとおにぎりを出した。

「あの犯人、オクトパス。意外といい人だったわね。」「僕には分かっていましたよ、エーアイですから。」「恐れ入りました。」

「あの、刺客に殺された、高橋って人も、伝子の話だと、フェアに闘うタイプらしい。正に右腕だった。管理官の話だと、オクトパスは、簡単に次の『幹』の情報をくれたらしい。どうやら女幹部らしい。年齢不詳。『シンドローム』って呼ばれているらしい。ええと。」

 高遠は、箸を置いて、メモを取り出した。

「『シンドロームとは、特定の原因や病態に基づいて、一連の症状がまとまって現れる現象を指す医学用語である』だって。」

「分かんない。」2人が声を揃えて言うので、高遠は、「ダウン症候群とか、うつ病症候群とか・・・。」と言いながら、2人ともぽかんとしているのを見て無理もない、と思った。

「難病とか、まだ正式名が決まっていない病気とかによく使われるみたい。だから、敵の名前も、正体が分かりづらい名前だね。ただ、オクトパスの情報だと、かなり残忍な性格らしい。」

「恐い女ってことね。伝子、入院していて大丈夫なの?」と、綾子が言うと、「僕もそれを考えて、警備を厚くするように頼んでおいた。」と、高遠は言った。

「まあ、くよくよ考えても仕方がない。婿殿。伝子が回復したら、頑張ってよ。」「はい。」

「じゃ、私は帰るわ。不倫しちゃダメよ。」と言い、ケラケラ笑って帰った。

 高遠は、明日はまたDDメンバーが慰めに来るだろうな、と思いながら、早めに就寝した。

 ―完―

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