魔剣召喚 エト
「か~ってうれしいはないちもんめ」
「まけ~てくやしいはないちもんめ」
「あの子が欲しい」
「あの子じゃわからん」
「相談しましょ」
「そうしましょ。」
「き~まった」
子供の頃に遊んだ異界より伝わるわらべ歌が、何故か優しく響いて来た。
涙が溢れる。
そんな時代があったのだと、この変わり果てた世界でそう思った。
そんな穏やかな昔から、一緒に過ごしていたのだと今更思い出した。
子供ながらに照れくさくて、俺だけが素直に言えなかった最後の言葉。
馬鹿な俺は、あの頃から何も変わっちゃいない。
火柱の如く身体が真紅に染まり、突き刺さった魔剣を葬送し始める。
同時に束縛が薄らいだエマの瞳があった。
見知った懐かしい瞳がそこにあった。
だが、同時にその身体はポロポロと朽ち始めている。
「……エト、……わたし、魔剣に取り込まれたんだ……、ごめんね」
取り戻せない後悔を滲ませた懐かしい瞳。
「謝らなくていい、君のおかげでみんなが助かった」
瞳から涙を溢れさせ、エマの痛々しい声が響く。
「……でも駄目だよ、こんなの嫌だ、エトが死んじゃう」
全てを察した彼女の優しさが、どうしょうもない痛々しさを抱きしめていた。
そんな顔をさせたいんじゃない。
俺はただエマのその瞳を穏やかに見つめた。
魔剣葬送の禁忌魔術、取り込まれたエマと魔剣、依り代になりて死する俺の魂をその贄として、禍々しい不吉をこの世界から滅す。
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