第16話アルスの想いとダロムの悲しき想い

ダロムのその後。


しまった…あんな誓いをするほど追い詰められるとは。


冷静さを欠いてしまった。冷静であったなら、あんな誓いを立てずに済んだ。


だが怒りを鎮めるのは私には難しかった。


セレナに子供の様に注意されたという事実。


セレナに対する怒りなのか?

自分自身の浅はかさに対しての怒りだったのか?


おそらく両方だろう。


冷静になれば彼女の言っている事は何も間違いではない。

しかし…それでも逆恨みだが、今でも怒りが込み上げてくる。


それでも最後に冷静になれたのは、アルスがもう少しで、ベラの魔法の毒で死ぬと思ったからだ。


長女のマリサの事を言ってたな。味方につけたのか?

かなり厄介だ。予知夢で未来を知る能力か。


恐るべき能力だ。無敵に近い…が必ず何か綻びがあるはず。


この世界での魔法は、どんな能力であろうと、完全無欠なものはない。


それは、メリットがあると言うことが、逆にデメリットにもなることがあるのだ。




セレナの視点


いや…焦りましたよ。私はお嬢様がダロム様に斬り殺されるのではないかと、ハラハラしました。


もし私がそうなったら、ダロムは処刑されるでしょう。


彼は感情的になり過ぎるわ。そうされた方が、国としては安定するでしょうね。と私は呟いた。


いや…お嬢様が亡くなる損失の方が大きいでしょう。お嬢様は死ぬのが怖くないのですか?

とロバートが恐る恐る聞いた。


それは怖いに決まってます。

けど、私は死にませんよ。


もしそうなるなら、マリサ姉様が予知夢で教えるはず。

言わなかったと言う事は、そうならないと思ってましたから。


それに、もしそうなれば上手く逃げて、あなたに盾になってもらおうかしら?

と私は呟いた。


ふふ…そうね冗談よ。私の為に誰かが亡くなるなんて、考えたくないもの。上に立つもの失格よね。

と私は弱気に言った。


その様な事はありません。命の重みを知っているお嬢様は、きっと良い指導者になれます。

とロバートが心を込めて言った。


ありがとうロバート。と微笑んで言った。


その後メイドの面接を終え、私の中では1人のメイド、アリーシャに決まった。

面接で聞いた、出身地、得意な技能、忠誠心、そして家族の事。


あなたの家族は?


はい、夫と、息子、娘がおります。

ただ夫が不治の病で倒れまして、生活は、かなり苦しいです。なので、私が支えていかないと行けないので、その分働かせて頂ければと、思います。


なるほど、夫が…それは大変ですね。私も同じ様な状態なのです。と語った。


けれど、希望が出て来て、私の能力で、夫を救えるかもしれないと、姉から教わったので。


と私は語ったが、この事が、喋られると面倒なことになりそうと思った。   


それでもあなたの夫を救えるかもしれない、そう伝えずには、いられなかった。


面接を終えアルスの部屋に来た。


ベットに横たわるアルスに挨拶を交わし、私の能力について、説明した。


アルス、この豆を食べて、体調が良くなるから、と私は夫に言った。



君の能力かい? ありがとう、頂くよ。

もし体調が良くなったら命の恩人だね。と微笑んで言った。



命の恩人か…そう思われても、何か負担かな。アレスが元気になってくれるだけで私は、充分だから。

とアルスを見つめて言った。



そう? でも感謝の気持ちは、持たないわけにはいかないな。

治ったら、いっぱい恩返しするからね。


ちょっと気になるけど、その豆って、出すのに疲れたりはしない?

僕が助かって、妻が亡くなったなんて、絶対に嫌だぞ。とアルスは目を潤ませて言った。



うん、全然疲れたりしないの。そもそもこの豆使い道が分からなくて、使い始めたばかりで、色々分からないところはあるけど。



そうか、良かった。僕が…もし治ったら…言いづらいけど言うよ。


ダロムに継承権を譲って、医者を目指そうと思ってる。やっぱり、僕より、弟のが王に向いてると思う。


悔しい気持ちはあるけど…弟は優秀だよ。


それに僕自身が、医者になりたいって気持ちが大きい。親しかった人達や、母が亡くなって、その気持ちは、どんどん膨らんでいる。



君の能力も人を救う為の能力だ。君の力と、僕の知識で、沢山の人を救えると思う。


でも王妃には、なれなくなるね。とんでもない我儘だよね?

とアルスは呟いた。



いいえ…素晴らしい考えだと思います。私もそのお手伝いが出来ればと思います。

と私は答えた。


ただ…ダロムに王位を譲るか…それは危険な事だと私は心の中で呟いた。




ありがとう…急なことなのに、即答してくれて嬉しいよ…セレナ愛してるよ。と夫は私に口付けをした。

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