第7話結婚式とそれぞれの思惑
結婚式当日。
セレナ様の専属メイドになりました、ベラと申します。よろしくお願いします。と彼女が挨拶した。
セレナです、よろしくお願いします。と私は挨拶を返した。
ウェディングドレスを着るのを手伝ってもらい、鏡で晴れ姿を見た。
自分で自惚れるのもなんだけれど、綺麗。これが私か…と有頂天になった。
ほんと幸せ。アルスありがとう。と心で感謝した。
少し失礼致します。とベラが言って何処かに行った。
私は鼻歌を歌い、これからのアルスとの幸せなひとときを想像していた。
セレナ様お飲み物をお持ち致しました。とベラが言った。
ありがとう。と私はお礼を言った。
その後にベラが転けてしまった。
ベラがドレスにワインをこぼした。申し訳ございません。とベラが薄ら笑を浮かべながら言った。
申し訳ないと思ってないのがありありと分かった。もしかしたらわざとかもしれない。
そう思ったが…良いわ、起こったミスは仕方ないですもの。替えを用意してくださる?
と私は聞いた。
いえドレスは1着しかありません。とベラは冷たく言った。
このまま染み付きのドレスを着ろと言うのですか? と私は怒って言った。替えぐらい用意してるはずと思ったからだ。
そうですね…そうするしかなさそうですね。とベラが他人事の様に言った。
私は少し腹を立て、あなたが付けたんですよね。それは無責任ではありませんか?
とベラに問うた。
だから、それについては謝ってるでしょ!
と怒鳴りながら言った。
え…私は何が起きているのか、分からなかった。メイドにまさかそんな口をきかれるとは
思わなかった。
もちろんメイドだから、見下しているとかではなく、あくまでも上下関係はあるはず。それを無下にするのが信じられなかったのだ。
あの…開き直るのはおかしくありませんか?
とベラに言った。
開き直ってませんよ? 申し訳ないとは思いますが、そうは言われても、私は何も出来ません。替えがないのですから。とベラが言った。
もう自分でなんとかする。とベラに呆れてしまった。
私の能力で手からティッシュを出して、それで叩いて拭いた。ただ擦るのは逆効果だと、本に書いてあったので辞めた。
こう言う時は役にたつわね。と心で呟いた。
それを見ていたベラが鼻で笑っていた。
なんなの…このメイド、あぁエレノアが恋しくなる。
エレノアとベラを比べてしまう。エレノアが立派なメイド過ぎたのかしら?
だがそれでもベラに対して不信感を抱いた。
少しシミが残ってしまった。恥ずかしいけれど、このまま行くか。開き直りも大切よね。
と自分を励ました。
それに自分でも念の為に用意しなかったのも悪いわよね…でも待って。と自分を慎重に考えてと諭した。
これって私だけの問題じゃなくて…アルスに恥をかかせる事にならないかしら?
やっぱり夫になる人に、このことを相談しないのは、ちょっと不味いよね?
と考えを改めた。
そこで私は夫の元に向かった。
途中でメイド達が立ち話をしていた。
ベラって特別扱いよね、それに凄い出世よね。
聞いた話しだと、ダロム様のお気に入りらしいわ。2人の仲怪しい。
えーダロム様ってベラよりずっと年下よね?
と言う会話が聞こえていた。
盗み聞きしてしまった。なるほど、それでかと納得して、アルスの所についた。
染み付きドレスの件と、ベラへの不信感を多少和らげて伝えた。
替えのドレスがない? それは変だな。
うーん…困ったね。
そうだ…もしセレナが良ければ母の形見のドレスで良ければ是非使って欲しい。
とアルスが提案した。
あぁ…アレスに相談して良かった。と心で呟いた。
ありがとう、是非使わせてもらいます。と私は答えて涙を流した。
どうしたんだい? 泣いてしまって?
とアルスが心配そうに聞いた。
アルスが…優し過ぎて…ごめん…ありがとう。と完全に泣いてしまった。
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