(二)-13

「拙者は新開大神宮の宮司、大田黒伴雄。冥土の土産に覚えておいて頂こう」

 我らが敬神党の党首たる大田黒殿は、そう言うと中佐から刀を抜いた。中佐の刀傷から血が吹き出た。そして力を失い中佐は膝から崩れ落ち、南坂に倒れた。

 それを見ると他の侍たちは次の獲物を探して坂を上がっていった。砲兵隊の兵舎の脇の坂道を上がると、熊本城の大手門につながる。その大手門の脇には第一三歩兵連隊の武器庫があった。多くの侍がそちらへ向かった。

 出遅れた二見がどこへ向かおうか一瞬ためらっていると、大田黒殿が「武器庫の方は彼らに任せて我々は兵舎の方へ行こう」と声を掛けてきた

 二見は「はい」とうなずき、先に走り出した大田黒殿の後を追った。


(続く)

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