(二)-3

 誰かが部屋の隅の方へ行き「誰もいないぞ」と声を上げると、全員で廊下に出た。

 二見たちが、次の部屋に飛び込む。この部屋は厨房だった。部屋は灯りがついていた。二見が先頭きって突入すると、正面奥の壁際に誰かがいた。さきほど玄関の扉を開けた下男だった。下男は壁に背を付けて床にへたり込んでいた。

 二見は厨房の奥まで来て下男の着物の襟を掴んだ。そして力任せに引っ張り上げた。

「県令はどこだ!」

 二見が怒鳴った。

 下男は目をつぶり、「命だけは、命だけは」と繰り返しながら首を左右に振り続けた。


(続く)

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