有名ハッカーの俺、リアルでは静かに暮らしたい。
月乃糸
第1話
最近、というかここ一ヶ月間ほぼ誰かに監視されている。
学校では人目があるので勘違いだろうが、帰りの電車や遊びに行くときなども監視されていて勘違いとは思えないほど監視されているようだ。
なぜ監視されているのか、多分理由は一つだろう。俺がハッカーだからである。もっと言うと、BlueBirdという世界を震撼させたウィルスの作成者だからだろう。
「三神君、大丈夫ですか?」
「え?」
「24ページの10段目から。 しんどいなら保健室に行っても大丈夫ですよ」
「あ、いえ、大丈夫です」
しまった。考えすぎで聞こえていなかった。
ここは洛央高校、京都一の偏差値を誇る進学校だ。そこで俺は成績優秀者として確固たる地位を気づいているためその分これくらいの事では成績に影響はない。
「じゃあこれで授業は終わります」
短縮授業って神だよな。部活は長くできるししょうもない授業はすぐ終わるし。
じゃないじゃない、この監視をどう潜り抜けるかを考えないと。
「ゆっち~お前珍しいなぁ~」
ゆっちとは俺のあだ名だ。話しかけてきたこいつは
「何がだよ」
「話を聞いていないなんてなぁ。お前が考え事なんて珍しいじゃないか」
「まぁちょっとな」
「えぇ~何話してんの?」
今話しかけてきたのは林梨歩、浩太の彼女だ。リア充マジで許せん。
「さっきの授業でこいつが話を聞いてなかった話をな」
「うるさいな。二人纏めてどっかいけよほんと」
「えーうざー」
「リア充は二人でラブラブしとけ」
「はいはい、お前もいつかなれるって。 性格直せば」
「それは無理に近くないか」
そんな他愛のない会話をしながら裏で原因を探る。
俺は合法なのも違法なのも実行するときは防弾ホスティングに使い捨てノートでNologVPNを付けながらssh接続をしていたから身元が割れることはなかったはずだ。やっぱりおかしい。バレるはずがない。
「とりあえず部活行こうぜ。 今日は曲決めあるから早くいかねえと」
「うい」
あぁ...ほんとにどうしようか。
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「ただいま~」
誰もいない家で誰にも向けていないただいまを言う。
「おかえり~」
「え?」
反応が返ってきた。お父さんの声だ。
「今日仕事は?」
「有給消化推進日。明日からゴールデンウィーク」
「あーね」
全く気にしていなかった...ゴールデンウイークはこの監視を撒く方法をしっかり考えなければ...いつものように帰り道で撒いても家から出るときにまた監視されている。
ただ、今日は特に監視されている気概は感じられなかった。明日から出かける予定もなにもないし一応は大丈夫だろう。
「ちょっと大事な話があるんだが...」
「え?なに?」
いきなりお父さんが話しかけてきた。
「お父さん、離婚してもう10年じゃないか」
「まあ」
俺の両親は俺が小学1年生のころに離婚している。一応俺には姉と妹がいたみたいだが、顔も思い出せないし写真にも残っていない。
「そろそろ再婚しようと思ってな」
「おん、いいんじゃない?」
俺が中学校に上がった辺りからずっと再婚したいって言ってたし。
「軽いな。裕の人生にもかかわるんだぞ?」
「どうせ遠慮して喋らないし。形上の母親ができるだけでしょ」
「まぁそうなるだろうな。で、今結婚を前提に交際している女性がいるんだ」
「はぁ...」
「で、その家族とゴールデンウイーク中のいつかに顔合わせをしようってなったんだ」
「へぇ~....は?」
「だから空いてる日程を教えてほしいんだが」
「いや基本的に全部空いてるけど。なに?家族って言った?」
「あぁ」
「え?家族構成は?」
「母の美智さん、お前の3個上、優子と同い年の加奈さんだけ」
優子というのは元姉だ。俺は離婚してからずっと会っていないがお父さんは数年に1度会っていたらしい。もう三年ほどあっていないらしいが。
「だけって...それは話が違う。義姉ができるの?無理無理」
ただでさえ根暗陰キャなのに新しく家族が出来て+3年?気まずいだろ。
「言うだろうなと思ったからここまで言わなかったんだ」
「はぁ?まぁどうせもうお父さんがここまで来た手前絶対結婚するんだろうけどさぁ」
「おう。もちろん」
「あぁ...バイトのお金で別居でもしよう」
「JDがここに住むとか俺が一番気まずいんだからやめてくれ」
「はぁ....」
有名ハッカーの俺、リアルでは静かに暮らしたい。 月乃糸 @rast-one
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