ブラッククエーサー
しおとれもん
第1話オーラ
待ち合いは一番の診察室前だった。
「大曽根さーん。」
ナースが顔を出したドアの見切りが重なる!
「須崎さん!?」
写真で顔を見るのと平面で観ているだけだから、実物の顔を見るのとでは空気感が圧倒的に立体的なのでドキドキしていて、ピンク色のイルージョンが沸き立つのを肌で感取っていた。
ドキドキしていたし、「一目見ると惚れるよ?」
と、八代の予言通りその様に為っていった。
フェイスバインダーで見たことのある口角の上がり具合、上がり眉、白い肌、日焼けしたら赤く腫れるんだろうな。
僕と同じで・・・。
「はじめまして、ナースだったの?」
「トイレは何処?」咄嗟に出たデリカシーのなさげな僕の質問に
「付いて来て?」と僕を誘導してくれた。
今までケアマネージャー兼社会福祉士だとばかり思っていた。スゴイ情報だ!
僕は彼女の左手を握りしめ案内を促した。
「ジャクスに勤務していたんだね?八代ちゃん。」手を繋いだままで話を続けた。
左側を振り向き八代の横顔を観察。鼻がキリッと高い。
。口角が上がっている。
やっぱり八代ちゃん。
トイレの入り口に立つ。
「スタッフ入口と書いてあるから誰も気付かないんだよね?」
こちらを見た。「あの、ハグしていい?」
「構わないよ?」
軽いやり取りのあと、僕はソッとハグをした。
ナース服の柔らかい感触と同時に体幹の軟らかさ、温かい体温、髪のシャンプー、フレグランスを同時に纏う。
いや、深呼吸した。
「ちゅーしていい?」
「勤務中。」
これも軽いやり取りで、勤務が明けたらキスしていいのか?
脳裏に過ったが、これ以上は詰めなかった。
何せ男と女、ナーバスな関係。
一瞬の内に悟りの境地に至り待ち合いで会計を待った。
ジャクス病院で勤務なんて、聞いてなかったから凄い宝物を堀当てた気分がして、白いナース服にオレンジ色が交錯するのを何故だか脳裏に過った。
それが彼女のオーラだと、ジャクス病院を出た後の帰りのタクシーの中で気付いた。
急性期に僕は車椅子に乗っていた。
約1年半、それは続いて人のオーラが見える様になった事を期に歩ける様になった。
「八代(やしろ)ちゃんはオレンジ色のオーラをしているね。それは、困難を乗り越えるパワーがあると言う事なんだ、後は愛に溢れていて、キミはとても優しい。」
切っ掛けはこんな感じで会話が進み、僕達は何の軋轢も無く恋人同士になった。
そしてこの前のゴールデンウィークの冒頭にこんな騒動があった。
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