百日紅

百日紅

百日紅が咲いたよ

君からのメール

百日紅？夏に咲く花なんて

ひまわりくらいしか知らない

百日紅を画像検索してみる

美しい浅紅色に染まった花びらと

小さな実を沢山つけている

見事な木々を見て

百日紅 綺麗よね

君と同じ百日紅を見たいな

なんて 少しこそばゆくなるような返信を

思い切って送ってみる

それから5時間経つけれど

泣いてなんていない

君の家の庭には沢山の花が

年中咲いているから

もうどれがどれだか分からないよね

程度に留めておけばよかったか

送ってしまったもの

もう取り返しがつかない

ああでもないこうでもないと

風呂に入れと喧しい母の声に耳を塞ぎ

部屋でひとりすねていたら

不意に君からのメッセージ

そうだね

明日にでも遊びにおいでよ

こんな短い文章なのに

目の前がぱぁっと明るくなって

瞬く間に元気を取り戻せるのだから

我ながら現金だと思うけれど

でも 君の素直で温かい微笑が好きだから

さっさとお風呂を済ませて

髪の毛しっかり乾かして

肌のお手入れしたら

すぐに眠るつもり

すぐに返事をするのはみっともないから

お風呂からあがってひと心地ついて

スマートフォンを手に取る

いいの？じゃ 明日の昼過ぎに行くね

顔文字のひとつも付けた方がいいのか

散々悩んで結局シンプルに

君からの返信は待たないよ

私はもうベッドに入って

明日が来るのを待たなきゃならないんだから

百日紅より

君に会えるのを楽しみにしているんだから