天使の断罪×悪魔の贖罪

@AI_isekai

断罪か贖罪か

欲深き者

フィフ・ヴァ・ドワール -1-

 深い眠りに誘われ、今宵もまた一人の人間が――発った。


 *


 「ここは、どこだ?」


 目を覚ませば、俺は見たことのない空間にいた

 奥行きがあるかすら疑わしい延々と続く白の空間と黒の空間の狭間にある椅子に、俺は座っていた。


 「目を覚ましたのですね」


 何もなかった黒の空間、俺の右側から優しい声が聞こえた。

 すぐに振り向くが、そこには何もない。やはり、ひたすらに続く黒の空間のみ。


 「何をしているのですか?私は、ここにいますよ」


 先ほどと同じ優しい声が聞こえると、何もなかった空間から白い翼を持ち、光り輝く存在が顕現した。

 女か?……何もかもが純白に包まれた彼女は、黒の空間には似つかない。


 「あなたは…?ここは、どこなんですか?」


 「ここですか?ここは、天界と魔界の狭間に位置する執行場です」


 執行場?何を言っているんだ。俺が、疑問を投げかけようとした瞬間。白の空間から、魅惑の声が鳴った。


 「今宵は、この者が執行対象なのだな」


 「あら、もう来たの?悪魔は来なくていいのに」

 「贖罪の機会を与える役目を持つ我が、来なくていいだと?天使の分際で」


 天使? 悪魔?

 白の空間に目をやれば、天使と言われた純白の存在の対である漆黒の存在がいた。黒い髪、黒い目、黒い翼、黒い衣服……すべてが真逆の女がそこにはいた。


 「あなたたちは、一体何なのですか!」


 「マーラ、人間にはまだ伝えてないのか?」

 「悪魔に答える必要はないわ」

 「……マーラ貴様」

 

 自分を無視する二人に、徐々に怒りが湧いてくる。舐めやがって。何が、天使だ。悪魔だ。俺が、そんな存在に惑わされるわけがない。どうせ、どこかの刺客が幻影を見せているんだ。

 ……困ったな、候補が多すぎる。目が覚めたら、あいつらも処分するしか――


 「人間、名を言え」

 「名前を教えていただけますか?」


 言い合いは終わったのか。この俺にそんな態度を取って、許されることではないぞ。だが、現実では何が起きているか分からない。ここは、素直に従うべきか。

 俺は、悪魔と天使を見ながら口を開けた。


 「俺の名前は、フィフ・ヴァ・ドワール。フィフと呼んでくれ――」


 「我に指図するな、人間」


 「ヴァーレ、そういう態度を取るから"悪魔"なんて揶揄されるのです。私のように慈愛に満ちていなければ、嫌われますよ?」

 

 「マーラ、貴様程度すぐ殺せることを覚えておくんだな。神の加護が無ければ、ただの塵も同然の存在が調子に乗るな」


 「ヴァーレ、貴方がどれだけ担当執行場を変更されたのかは知りませんが、貴方こそ死にたくないのならその態度を改めてみては?」


 悪魔のほうは、ヴァーレ。天使のほうは、マーラと言ったところか。

 鼻に付くが、容姿は美しい。


 「仕方ないな。マーラ、始めるぞ」

 「そうですね」


 『執行対象フィフ・ヴァ・ドワールに、告ぐ』


 突然の宣告に、俺の全身が身震いしたのを感じた。おかしい、この俺が怯えているのか?何があった。

 さっきまで、なんの気配も感じなかったのに。なんだ、この逆らってはいけないと本能に訴えかける"モノ"は……!


 「断罪か」

 「贖罪か」


 『選びなさい』

 





 


 

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