第41話 初日
寝坊だ。
昨日の夜更かしが過ぎた。
だがするしかなかった。ルームメイトのこれからの学園生活がかかっていたのだ。
ここで見捨てたのではルーシーは一生後悔するだろう。
だが、学園初日から遅刻……。それだけはあってはならない。
「ソフィアさん、時間がない! さっさと着替えないと。ああ、このシャツのボタン! くそ! まあいい、ネクタイとブレザーでごまかせる!」
「ちょっと! ルーシーさん、ボタンはちゃんととめて! 下着が見えてしまいますわ!」
またボタンを掛け間違えてしまったようだ。
やり直しをして、ネクタイを締める。
ソフィアは着慣れているのか、すでに着替えが終わり、髪の毛を整えていた。
ネクタイを何回か締めなおす。納得できる範囲で襟元を正すと、ブレザーを着る。
髪は後だ、ブラシをかけるくらいなら歩きながらでも出来る。
「よし! ソフィアさん行きましょう!」
ルーシーがドアノブに手を掛けると、ソフィアは違和感に気付き、慌ててルーシーを止める。
「ルーシーさん! その格好で外に出ないで下さいまし! スカートを穿かないと! どういうつもりですの!」
ルーシーは取り乱していた。
遅刻だけはまずいと慌てていたのか、あるいは普段ワンピースを着ているため、スカートを穿くことを忘れていたのだ。
「え? しまった、スカートは別だったっけ。まったく制服とは面倒くさいものだ! ……ソフィアさん! 髪の毛はもうばっちりです! グルグルの一つや二つはこのさい妥協してください! 朝食抜きだけは勘弁です!」
とにかく時間がない。細かな身だしなみは教室に着くまでに、お互いに注意しながら直していくことにした。
とりあえず朝食をとらなければ。
身だしなみでは腹は満たせぬ。
昨日あれだけ身だしなみについて考え直していたのにどこ吹く風であった。
二人は寮にある食堂に向かう。
寮の朝ごはんはパンにスープと、いくつかのチーズにベーコンが並ぶ。
美味しそうではある。しかし、じっくりと味わう時間がない。
慌ただしく朝食をすませ、そのまま寮を出る。早歩きで学園の教室棟へ向かった。
ソフィアは歩きながら専用のブラシで器用に髪の毛のクルクルを直していた。
彼女にとっては縦ロールの髪型に余程のこだわりがあるのだろう。
ルーシーは、シャツのボタンが間違っていないか、ネクタイが曲がっていないかをチェックする。案の定、ブレザーがスカートにインしていたので引っ張り出す。
お互いの格好に違和感がないか確認をし、無事教室にたどり着いた。
授業開始までは少し余裕がある。ほっと溜息をつく二人。
「うふふ、今朝はバタバタしましたけど。何とかなりましたわ。それにルーシーさんとは、なんだかとっても仲良くなれたみたいで嬉しい」
ソフィアはニッコリと笑う。
普段は釣り目のせいか、怒っているように見えるが笑うと年相応の可愛い少女であった。
「私も同感。ソフィアさんとは前から付き合いがある友達なんじゃないかって思っちゃったし」
「そう、嬉しいわ。じゃあ行きましょうか!」
教室の扉を開くと、そこには数十名の同年代の子供たちがいた。
昔からの知り合いなのかグループで談笑をするもの。
静かに席に座り本を読む者など様々だ。
彼らがこれから数年間共に過ごす、オリビア学園、魔法学科のクラスメート達だ。
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