第28話 西グプタ①
朝食を終え。少し時間が過ぎると西グプタの港が見えてきた。
外観は東グプタと類似しているので特に感動した訳ではないが、今まで自分たちはずっと海の上にいたんだと改めて実感した。
ゆっくりと船は寄港する。船から降りる頃にはちょうどお昼が近い。
船で昼食を取るのも良いが、どうせなら外で食べるのがいいと子供たちは船から降りることにした。
「ルカ様は降りられないのですか?」
「まあのう、今回の乗船はあくまで仕事であるからの。エンジンが止まっている今でしか調査できぬことがある。
データ取りに一日かかるのでな、一応保護者としてセバスちゃんに同行させよう、さすがに子供達だけで街をうろつかせるのも良くないからのう」
「お気遣いありがとうございます」
「はっはっは、弟君は礼儀正しいのう、ルーシーちゃんも少しは見習うとよいぞ」
「ふん、ルカさんこそ、もう少しセバスティアーナさんを見習ったほうがいいんじゃないですか?」
昨日のコンテストの結果にまだご立腹のルーシー。
「おっと、これは手厳しい。ではな、セバスちゃんよ、出航まで子供たちをたのんだぞい」
街へ出るために下船口の通路を歩いていると、反対側の乗船口の通路に、これから乗船する人が列を作っているのが見えた。
彼らは西グプタ側のお客さんで、これから船旅を楽しみにしているのかガヤガヤと賑やかだった。
無事下船を終え。港町につく子供たちと引率のセバスティアーナ。
「さてと、皆さま、これからどうされますか?」
「まずはお昼ご飯たべなきゃ。その時にどうするか決めましょう」
いつの間にか普段の口調でセバスティアーナに接するルーシー。昨日の事件で友情の様なものが芽生えたのだ。
「わかりました。では、皆さま、なにを食べたいですか?」
「うーん、そだねー。ジャンクなのがいいなー。お船の料理は豪華でいいけど飽きちゃった」
「俺もだぜ。そうだなー、何が良いかなー、ピリッと辛いやつが食べたいけど、ルーシーは何が食いたい? こういうときのお前のセンスは当たるからな」
「うむ、ならば、ピリッと辛いソーセージってなんだっけ、あれにマスタードとケチャップたっぷりのホットドッグがいいわ」
「チョリソーだねー。私も好きー。レオ君は何かある?」
「うん、僕もそれでいいよ。セバスティアーナさん、よろしいですか?」
「はい、問題ありません。でしたら少し歩いたところに屋台がありますので、そこでお昼にしましょうか」
ガブリっと大きなソーセージが挟まれたホットドッグを満面の笑みで頬張るルーシー。
「姉ちゃん。相変わらず食べ方が汚いんだから。ほらケチャップが口の周りに」
「相変わらずだなー、大人になったんじゃなかったのかよ」
「うるさい。丸かじりしないのはホットドッグを愛する人達に対する冒涜だぞ!」
「一理あるか。アンナもお行儀よく食べてないで、これはこうやって食うんだぞ」
ジャンも勢いよくホットドッグにかぶりつく。
「私じゃ無理よー。ソーセージが太くて口からはみ出ちゃうよー。
そういえばルーシーちゃん、昨日は寝ちゃったから聞けなかったけどパーティーで何があったの? 船長さんからも褒められてたし、お小遣いもたくさんもらってたみたいだけど」
「そうだった、姉ちゃん、危ない事したんじゃない? 僕達にもちゃんと教えてくれないと」
「ふふーん。実はな。あのピエロの犯人に呪いを掛けられたのだが、吾輩がとっさに呪い返しをしてやったのだ! 説明が難しいが、なんだっけ『地獄の女監獄長』となって奴に説教してやったのだ」
「なにそれ。……姉ちゃんの説明は相変わらず分からないけど、今回は特にひどいや。うん? アンナちゃんどうしたの?」
「――っ! ル、ルーシーちゃん。まさかアレをやったの? ボンテージに鞭とロウソクで……。どうだったの? ねえ、ここだとアレだからお船に戻ったら詳しく聞かせてね?」
「な、なんだ? 珍しくアンナが早口で喋ってるな。まあ、よくわからんけど。すっげーじゃん。いよいよ魔法使いになってきたってことだな」
「あら、ルーシー様は魔法使いなのですね。なるほど、それにしても呪い返しとは恐れ入りました。私とて、呪いを解くことはできましたが。回避することは出来ませんでした。……さすがですね」
「わっはっは。もっと褒めてもよいぞ! 吾輩は、あ、違う、我は呪いのドラゴンロードなのだから!」
「もう、すぐ調子に乗るんだから。」
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