転生召喚士は最強を目指して
智之助
第1話 異世界転生はお約束
―質問です。
普通に寝てて、起きたら家と違う場所で、しかも目の前で超絶美人が土下座して泣いています。どうすればいいですか?
―答え、意味が分からない。
「えうっ…うぅ……ずみませんぅ~~~!」
「……ナニコレ?」
泣きはらしたその姿も美しいと感じる美の化身。そんな存在が、土下座で謝罪を繰り返している。改めて考えても、意味が分からない。
「えっと、とりあえず、頭を上げて下さい。」
「……うぎゅぅ…はい………本当、申し訳ありませんでした。」
何時までも土下座は見てるこっちが申し訳なくなるので、頭を上げてもらう。……うん。やっぱり、凄い美人だな。この世のモノとは思えないくらい。
「それで、これはどういう状況ですかね?自分は家で寝ていたはずですが……」
「はい……説明させても貰います。実は――」
……美人さんが言うにはこういう事らしい。
一、現実の俺は死んでいて、今の俺は魂のみの霊体だよ!
二、この美人さんは輪廻転生を司る最高神様の部下の一人で、流れと月と美しさを司る女神様だよ!
三、死因は輪廻システムの点検中におきた女神様の操作ミスだよ!
四、予定にない死はシステムのバグに成る為、女神さまは俺をこの世界と天界の狭間に連れ出したよ!
五、このまま元のシステムの中に戻すとシステムが壊れちゃう為、一度他の世界に転生させるよ!
うすうす感じてはいたけどマジで死んだのか、俺。まあ、この空間と言い、目の前の女神様と言い、ラノベでありがちなものだったからそうだとは思ってたけど……実際に俺が体験する事になろうとは思いもしなかった。
「システムは非常に繊細なものなので、一度取り出した魂を元に戻す事はできません。しかし、システムの外に出た魂をそのままにしておくと、長い年月を懸けて地獄より苦しい思いをしながら消滅してしまいます。」
「…で、その魂を消滅させない為に他世界の輪廻に加える、所謂異世界転生をさせると?」
「はい。元々、魂が億に一回ぐらいの確率でシステム外に零れ落ちる事は有りました。その解決策として、異世界転生と言う手段がありました。しかし、今回は事故では無く私の責任ですので、本来なら行われない転生先の指定を行う為、謝罪と説明役として私がここにいます。」
普通なら、魂状態の場合は意識も無いものらしい。意識が無い魂の思いを読み取って、魂が望んだ異世界に説明なく転生させて終わり……っての言うのが通常のやり方だが、今回は特例中の特例で殆ど全部を俺が決めて良いそうだ。
「では、転生に関する指定に入りたいのですが……その前に、今一度謝罪の方をさせてください。―これからだった貴方の人生を奪ってしまい、本当に申し訳ございませんでした。」
「……女神さまの謝罪、確かに受け取りました。なので、もう謝らなくていいですよ。こちらとしては、感謝しているくらいですから。」
そうだ。確かに死んだ事は悲しいし、やり残してきた事は沢山ある。……だけど、あの世界は退屈だった。
「異世界転生なんて楽しい事が出来るのに、悲しんでいる暇なんてありませんよ」
ラノベを愛読している人なら、アニメやゲームを嗜む人なら分かるだろう。
異世界転生なんて二次元の中だけの出来事だと思っていた事が現実で起こるんだ。
悲しみや後悔より、楽しみと興奮の方が上回るに決まっている。
「―ありがとうございます。……では早速、転生に関するあれやこれを決めていきましょうか。」
「はい、お願いします!」
「先ずは――」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
「――では、最終確認です。」
流石、異世界。決めないといけない項目が凄く多いくて割と疲れた。
けど、折角の第二の人生なんだ。どうせなら、今まで我慢してきた事、できなかった事全部やりたい。自分に素直に生きる。心行く儘自由に生きたい。その為の苦労なら、喜んでやってやるさ。
「転生する異世界はファンタジー世界の¨エアルファン¨。転生状態は、異世界の成人年齢である十六歳の男で人間。指定クラスは『召喚士』で、初期習得スキルは『召喚術』、『空間収納』、『戦いの心得』、『生産の心得』、『闇魔法』の五つ。ステータスはHPとMP多めで他は平均値。場所は周りに低ランクモンスターしかおらず、召喚術とレベルを上げるには持って来いの街¨ファス¨。……これでお間違えないですか?」
「はい、大丈夫です。」
我ながら色々と細かく注文したモノだ。流石に、意識ありのまま赤ん坊からやり直しはキツイからな。自由に動ける年齢からにして貰った。
クラスはゲームでよく選んでいた召喚士。スキルはそれに合わせて有能そうなのを取った。ステータスはMPとHPだけ多めにして貰って、後は自分で好きに上げる為に平均値にした。
「では、貴方を異世界¨エアルファン¨に転生させます。……よろしいですか?」
「お願いします!」
「―貴方に、流れる月の祝福があらんことを」
さぁ、いよいよ異世界だ。ここから俺の新しい人生が始まる。
第二の生。地球には無い魔法や魔物、法則が飛び交うファンタジー世界。そこで、俺は自分に素直に生きるんだ。そして、全てを楽しみ全てを手に入れて、最後に言うんだ。
―良い人生だった!っと。
「―魂よ、巡れ。『世界流天・転生の神業』」
――こうして、俺は¨望神契土¨の人生を終え、新たに¨ケイトラン・プリズト¨の人生を始めるのだった。
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