16.お部屋探しは商人ギルドで

 冒険者ギルドを出た足で、今度は商人ギルドへ向かう。

 昨日の今日だけど、ポーションはまだあるし、納品されて喜ばれることはあっても困ることはないだろうしね。

 それに、ホームについても聞いておきたい。

 これからまたサポーター達を集めて、新しくホームを作らなきゃいけないし。

 あと、新しい家探しを手伝ってくれるって言ってたからそっちも見なきゃだ。


「なんだかんだで、やる事は沢山あるなぁ……」


 商人ギルドへ向かう途中、適当な屋台でアンジェと買い食いした。


「わ、美味しい!」


「はは、ありがとよ」


 ゲームでは屋台で買い食いなんてできなかったけど、実際に食べてみると結構美味しい。

 これからもこの親父さんのとこでたまに買おうっと。

 商人ギルドに着くと、錬金術ギルドと瓜二つの外観が昨日のストレージの件を思い起こさせる。


 ――まあ、もうどうしようもないんたけどねぇ。


 中に入って受付を見渡し、アリーさんを見つける。

 接客中だったので、僕達も順番待ちの列に並ぶことにした。


「アンジェはどんな家に住みたい?」


「ソーコ様とご一緒なら、どこでも大歓迎です!」


「そ、そう」


 意見が欲しかったんだけど、まあどこでもいいのなら実際に見て意見をもらおう。

 あーでも、僕的にはお風呂が欲しいなあ。


「どうぞ〜」


 僕達に気付いたアリーさんが笑顔で手招いてくれる。


「こんにちは、アリーさん」


「こんにちはです」


「お待たせしました、ソーコさん、アンジェさん」


 アリーさんが深くお辞儀して挨拶する。


「家の件ですね? これからご案内しますね」


「それもそうなんですけど、ポーションの納品もできればと。今日は最下級3本だけですけど、いいですか?」


「えっ? 今日も納品ですか?」


 カウンターの上に並べたヒールポーションを見て、アリーさんが驚いた。

 最下級といえども1本当たり大銀貨1枚、3本で大銀貨3枚――3万ストだ。

 やっぱり、ポーションはいい稼ぎになるなあ。


「はい、まだ以前作ったのが余ってたので。あ、それとホームについて教えて欲しいんですけど――ホームってありますよね?」


 AOLでは当たり前にあったけど、この世界でもちゃんとあるのか少し不安になった。


「はい、もちろんありますよ。ホームを立ち上げる条件とかですよね?」


「はい、そうです」


「まず、ホームは商人ギルド、冒険者ギルドのどちらでも登録が可能です。ただし、そのための条件が3つあります――『ハウス』と『お金』と『ランク』です。これらすべてをクリアすれば、どちらのギルドでも立ち上げて登録することが可能です」


 おお、この条件ならAOLのときと変わらないかもしれない。

 AOLでは錬金術ギルドしかなかったから、ランク基準が若干違ったけど。


「まずハウスですが、ホームの拠点となる場所のことをそう呼びます。そちらの登録が必要となるので、住居を購入するか借りなければいけません。次にお金ですが、登録料として100万ストが必要になります。これはホームを運営する力があるかということと、ホームの乱立を防ぐ目的もあります。ただし商人ギルドか冒険者ギルド、どちらかで立ち上げればもう片方ではその証明だけで登録可能です。もちろん、登録料は不要ですよ」


 うんうん、ハウスとお金の条件はAOと一緒だ。

 お金はなんとかなるとして、今の僕達は拠点となるハウスを所持してないから、この後の案内でいいのが見つかるといいな。

 どちらかで登録料払えばオッケーなのも地味に助かる。

 あと問題なのは――、


「3つ目のランクですが、立ち上げするにはマスターとなる者の冒険者または商人ランクがCランク以上でないといけません。立ち上げ後に降格してどちらもDランク以下になった場合、登録が解除されてしまいます。ですので、その場合は別のCランク以上の方にマスターを引き継げればそのままホームは継続されますが、それもできない場合は解散となってしまいます」


 ――これだ。


 今の僕の商人ランクはDだ。

 そして、冒険者ランクは最低のF。

 つまり、僕達がホームとして登録するには、どちらかのギルドでCランク以上にならなければいけない。

 まあ、商人ランクは少し頑張ればいけそうだけど、冒険者ランクは少し時間掛かりそうだし。

 とりあえず、Cランクになる可能性が早そうな、商人ギルドのランクを上げてくのが得策かなあ。


「ホームにもギルドごとにランク付けされるので、ホーム単位での指名依頼というのもあったりします。大体こんなところですが、ホームを作りたいのですか? どこかに入るという手もありますが」


「どこかに所属するのはちょっと……今すぐには無理そうだけど、いずれは作りたいです。なので、ハウスになりそうないい家、紹介してくださいね?」


「わかりました、お任せください!」


 アリーさんは、溢れんばかりの笑顔でそう応えてくれた。

 ポーションを納品した分のお金を受け取り、ハウス候補の家に行くため、アリーさんと一緒に商人ギルドを出る。

 僕の希望としては、あまり大き過ぎず、お風呂があるところを希望した。


「お風呂、ですか……わかりました。それでしたら、まずは1番おすすめの物件をご紹介しますね!」


 お風呂があるのはかなり限定されるみたいで、値段もそれなりにするものが多いらしいけど、そろそろお風呂に浸かりたいので譲りたくない条件だ。

 でも今はサポーターがアンジェしかいないし、大き過ぎても扱いに困るだけだしもったいないので、それなりの大きさでお願いした。

 AOLではサポーターも多かったので、豪邸ともいえる屋敷をハウスにしてたけど、お金の問題もあるので今回は繋ぎとしてでいい。

 いいハウスに出会えればいいなと、僕達は1軒目の物件に向かって歩いた。

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