6.取り調べ?
AOLのポーションには、たくさんの種類がある。
傷を癒やすヒールポーション、魔力を回復させるマナポーション、身体能力を向上させるエンハンスポーションなんてのもあって様々だ。
回復魔法の類がない分、多種多様なポーションがあって充実しているのだ。
そして、これらは7つの等級――上から神級、特級、最上級、上級、中級、下級、最下級に分けられる。
当然、それぞれの製作難易度や効果、価値も違ってくるというわけだ。
――ではでは、どの種類と等級のポーションを出すのかが今の問題だ。
一応、インベントリにはすべての種類があるんだけど、神級、特級、最上級なんかは出したらヤバい気がする。
悪目立ちしそうなヤバ〜イ予感が。
かといって、最下級もなぁ……この程度の実力かって思われても、AOL(自称)トッププレイヤーとしてのプライドがあるし。
ということで――うん、これにしよう。
「どうぞ!」
僕は1本のポーションをインベントリから取り出し、ドヤ顔で受付カウンターの上に置いた。
それを見た受付嬢が目を見開いて固まる。
げっ、なんかマズッた?
僕が取り出したのは中級のヒールポーション。
これくらいなら妥当かなと思ったんだけども、受付嬢の様子を見るに選択をミスったかもしれない。
「え、いまどこから??」
あ、そっち?
インベントリから出したから、何もないところからパッと現れたように見えたはずだ。
これが出来るのはプレイヤーだけだろうから、驚かれるのも無理はないかも。
もー、なんだかAOLで普通に出来てたことが、当たり前にできなくなっちゃうな。
「えーと、これで大丈夫ですか?」
「え? あ、はい」
言い訳するのも面倒だし、聞こえてないふりして笑顔でゴリ押しだ。
受付嬢も戸惑ったのは一瞬だけで、すぐにポーションに目を移した。
「え、これって……」
「中級のヒールポーションです」
「中級――!?」
「ほんとかよ?」
「でも、あの色の澄み具合はそれくらいありそうだぞ」
受付嬢と近くにいた何人かが驚きの声を上げている。
――しまった。
やっぱり、このポーションは選択ミスだったかもしれない。
ポーションというのは、等級が上がれば上がるほど色が澄んでいく。
ちなみに、ポーションは種類によって色が変化する。
ヒールポーションは青色で、これは中級なのでそれなりに澄んでいて濁りもそんなにないと思う。
「……これは購入したのでなく、本当に製作したものですか?」
「はい、僕が作ったものです」
あれ、疑われてる?
いくらなんでもこれ中級だぞ。
この下といったら、下級と最下級しかないんだけど。
最初の頃の愛らしい笑顔から一転、受付嬢の真剣な顔を見てると嫌な予感がビンビンする。
「承知しました。少々お待ちいただけますか?」
「は、はい」
受付嬢はそう言って奥へと下がってしまった。
うーん、周りの視線が気になる……登録できたらさっさと次の街に行ったほうがいいかなあ。
そんなことを考えてると受付嬢は戻ってきて、
「お待たせいたしました。申し訳ございません、お名前を伺うのを失念しておりまして……私の名前はアリーと申します」
「あ、そうでしたね。僕はソーコ、彼女はアンジェです」
「承知しました。
そう言って、アリーさんは深々と頭を下げた。
なんだかアリーさんの目力が凄い気がするけど。
「よ、よろしくお願いします、アリーさん」
僕がそう言うと、アリーさんはにっこり微笑んでくれた。
やばい、可愛い、惚れそう。
一つに束ねた綺麗な金髪、翡翠の目に大きな胸――こんな人、アッチの世界で見たことないぞ。
「それでは、奥の部屋にギルド長がおりますので、そちらでご登録させていただきます。どうぞこちらへ」
アリーさんは、笑顔のままで手をカウンターの奥へ向けた。
「へ?」
え、ギルド長?
何でそんな話になった!?
登録するのに、ギルド長の部屋に行くのが普通なの?
浮かれた気分から一気に現実に引き戻された。
ギルドの中は、さっきよりもどよめきが少し大きくなった気がする。
これは普通のことじゃなさそうだなぁ……。
背中にひしひしと感じながら、僕はアリーさんに案内されるがままカウンターの奥へと入った。
ギルド長かー。
きっと、さっき出したポーションのことだよね。
何聞かれるんだろう。
「こちらです。――ギルド長、お連れしました。どうぞお入りください」
アリーさんは、中で待っているであろうギルド長へ一声掛け、僕とアンジェを先に部屋へ入れた。
部屋の中は応接室兼執務室といった感じで、立派な机で書類を見ていたギルド長が顔を上げた。
「やあ、よく来てくれたね。ハイドニア商人ギルド長のグステンだ。ソーコ殿とアンジェ殿だね。とうぞ掛けてくれ」
「あ、はい」
僕とアンジェがソファに座ると、テーブルを挟んで反対側にギルド長が座り、アリーさんはその後ろに立った。
なんか取り調べみたいでちょっと緊張するんですけど!
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