第二章
第23話 影の者あるある エンドレス後悔
夜、寮の自室。
ユフィのベッドの上で、シンユーがのんびり毛繕いしている。
肝心の家主は、部屋の隅っこで毛布を被り三角座りをしていた。
「……おうちにかえりたい」
毛布から顔だけひょっこり出して、ユフィが虚無顔で呟く。
声に生気はなく、目は催眠魔法でもかけられたように虚空を見つめている。
半開きの口からは先ほどから数えきれないほどため息が漏れ出ていた。
「ああ、なんであんなことしちゃったんだろう……私のばかばかばか……」
ぽかぽかと頭を叩きユフィは後悔の言葉を口にする。
寮に帰ってからというものの、「あれは良くなかったんじゃないか……」「これも良くなかったんじゃ……」と次々に自己嫌悪が高まっていき、太陽と同じく気分も沈みきってしまっていた。
「二十点……くらいかな」
自分なりに今日一日の点数をつけると、その程度だろう。
少なくとも、友達ひとりを目標にして迎えた初日の授業は、大失敗と言って差し支えない。
皆の前で先生に詰められるし、一緒の班になったクラスメイトとは微妙な距離感だったし、回復魔法は相変わらずダメダメで一度もロクに治療出来なかった。
挙げ句の果てには迷子になって班の皆に心配をかけてしまう始末。
誰の役にも立っていない、むしろ迷惑ばかりかけている。
「はっ……でもでも! ライル様とは少し、仲良くなれたはず……はず、だよね?」
唯一のハイライトといえば、フレイム・ケルベロスの一件だ。
フレイム・ケルベロスに襲われていたライルを、攻撃魔法を使って救った。
回復魔法こそかけられなかったものの、ピンチを救ったことには変わりない。
「だから、少しくらいは……恩を感じてくれているはずっ……ってちょっと待って」
なんとも小物感の溢れる下心を抱いていたユフィの動きが、ぴたりと止まる。
「おかしくない? そもそも私の方が、ライル様よりも強力な攻撃魔法を使えるわけないし……」
勉強、運動、回復魔法、社交性、人間力。
どの分野でもダメダメな自分の攻撃魔法が、今年の魔法学園を主席で入学したライルのそれよりも強力だなんて、どう考えてもあり得ない。思い上がりもいいところだ。
あまりにも当たり前すぎて抜け落ちてしまっていた。
「ということは……まさか……!!」
ハッとして、ユフィは考え込む。
そして、真実の解を導き出した。
「ライル様のあれは、私の攻撃魔法を引き出すための演技……!?」
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