寂しがりや。

飛鳥部あかり

前編


牧野彩まきのさいは極度の寂しがりだった。

初めての一人暮らしに大きな不安を覚えていた。


そんな中、破格の物件(アパート)を見つけた。

狭いわけでもないし、訳アリでもない……と不動産会社はしどろもどろになりながら言っていた。

親と相談し、彩はその家の内見に行くことにした。


不動産会社の沖野が事前に丁寧に説明してくれた。

アパートの外観は……高級感があふれていた。

お洒落で、本当にこの値段で良いのか疑うほどだ。

でもなぜか、沖野はその家の中に入ることはなかった。

玄関前で沖野は「すみません、私はここでお持ちしています。ご不明な点等ございましたら遠慮なくお申し付けください」と言って、彩ひとりで内見をすることになった。



「うぅ……さみしいよぉ……」


彩は独り言を言いながら家の中に一歩入る。

なぜか鳥肌が立つのに「今日は寒いから……」と言い聞かせて細部まで確認していく。

近くにある電気をつけて辺りを見渡す。

……それにしても広い。

部屋は玄関、リビング、キッチン、トイレ、寝室と分かれていた。



彩はキッチンをのぞく。

————なんと包丁が浮いていた。


「おぉ~!!誰かの忘れ物かなぁ?」


彩はのんきに包丁に近づく。

すると包丁は逃げるように彩から離れていった。


「すげー!もしかして幽霊さんですか!?いるならぜひ出てきてください!!」


すると、つけたはずの電気がパチッと消えた。

そして、青白く発光した髪の長い女性が包丁を持って出てきたのだ。

彩は何度も瞬きして、納得したように頷いた。


「恥ずかしがり屋の幽霊さんだね!……お料理中?」

「……縺雁燕縺ッ隱ー縺??……」

「『お前は誰だ?』……あ、すみません。牧野彩です」

「……縺ェ縺懃ァ√?險?闡峨′蛻?°繧具シ?シ……」

「『なぜ私の言葉が分かる?』……えーっと私寂しがりなんですよね……。お友達がたくさんほしいので、いろんな言葉を学んでいるんです!!」


彩は幽霊の発している言葉に返答していた。

幽霊は髪で顔が隠れて見えないが、明らかに動揺していた。


「そうだ、よろしければ私とお友達になりませんか?……あの、お名前は……?」

「縺?k縺輔>??シ!!!」

「『うるさい』?……ウル・サイさんですね!!私と名前一緒だぁ!!」

「………」


彩は無邪気に喜び、幽霊に向かって手を伸ばした。


「私、この家に決めました!!……サイさんもここにいるってことは実質ルームシェアですね!!」

「……縺薙?螳カ縺ッ縺?繧√?や?ヲ窶ヲ蜃コ縺ヲ縺?¢??シ?シ」

「えー、やだよ!さすがに一人暮らしは寂しいから……」

「………」

「私、サイさんと一緒が良いよ……」

「……譛ャ蠖薙↓縺薙?螳カ縺ァ濶ッ縺???……遘√b縺薙%縺ォ縺?k繧茨シ滓?悶¥縺ェ縺???」

「この家、すごく安いし、サイさんがいるからここが良いの!!」

「縺ァ繧や?ヲ窶ヲ……縺薙%縺九i……豸医∴縺ヲ!!!!」


幽霊は包丁を振り上げて彩に襲い掛かる。

流石に彩も逃げ出して、玄関付近に来た。


「じゃあ、サイさん!……絶対ここに私、住むから!!絶対に引っ越しちゃだめだよ!!……またね!!……あ、今度一緒に料理しよう!!」

「縺薙?螳カ縺ッ繧?a縺溘⊇縺?′濶ッ縺??縺ォ………」



幽霊は最後に何かぼそっと言って、また姿を消した。

彩は外に出たら、不安そうな顔で沖野は私を見た。


「大丈夫でしたか?」

「……何がですか?」

「……え?」

「あ、私この家にします!!」

「……ぇ?……本当に大丈夫ですか!?」

「はいっ!!」


沖野は不思議そうに首を傾げていた。

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