妹へ
猫又大統領
事件に迫る
えっと。あの、この下に書かれているプラカードにはいい所を教えてって書いてあるんだけど、ないよ。
まあ、唯一あるのはこれから未来が沢山ある妹がいるってことかな。
妹はとても頭がいいみたいで、きっといい人生があると思いうんだ。
そうであってほしい。まあ、これから妹が幸せならどんな人生でもいいよ。正直。
頑張れよ。俺はもう会えないと思う。あんな奴らでも両親って呼ばれてるからな。世間は許さないだろう。
俺はきっと自分のためにやったことだから。お前は気にすんなよ。兄ちゃんは自分のためにやったことだ。
だけどな、山まで連れ出したのにやれなかった。そしたら、助けてくれたんだよ。助太刀とかっていうのかな。だから上手くできたんだ。
俺はどうせ戻れないし、彼らに付いていくことにした。もうこの道はお前と交わることはないんだ。
最後にお前の好きなプリンを冷蔵庫に入れておいた。きっともっといい方法があったんだろうな。助け方もわからないこんな兄でごめっん……な……
はぁ、よし。
じゃあ。できのいい妹へ ダメな兄からでした。
そうマイクの前で答えているのは、所々に泥が付着したヨレヨレのTシャツと同様の汚れがあって破れてもいるズボン姿の少年。顔色は悪い。
あの事件の数少ない人間側の協力者の少年が偶然にも民放番組の「あなたの住む村の良い所100個教えてくださいな」という企画で答えていた映像である。少年の答えた内容は企画とは関係ないためお蔵入りであったが映像の編集を担当していたADが気づいて大きなニュースとなった。
彼の話に出てくる両親と妹は現在も行方不明。
兄の彼は政府の発表では殺害されたことになっているが、あの事件は一方的であり、応戦もままならなかった事態にもかかわらず、彼らにとって貴重であるはずの協力的な人間をみすみす殺させるはずがない。
そう断言するのは当時その場に居合わせ、一連の事件をカメラにおさめたジャーナリストのX氏。
あれは知力、そして明確な目的もっていた。X氏は本誌の取材中たびたびそう答えた。
X氏は逃げ惑う群衆の来た方向に向かったそうだ。その理由を尋ねると、一言。ジャーナリストとしての使命が向かわせた。鋭い眼光で呟く。
使命に燃えるX氏だが途中、転倒をして足を痛めてうずくまっていると彼らと遭遇。その後ろに少年がいたというのだ。
少年は彼らにX氏を安全な場所に避難させるように頼んだという。
それからの記憶はないそうだ。気付いたらビルの屋上にいた。
そのビルの屋上から撮った写真がこの事件を象徴するものになった。国内外に広まったあの写真である。
その写真にはタイトルがあるという。事件を追いかける筆者も初耳である。
今回はそのタイトルと写真で連載第8回のお終いとする。
「
稲妻と炎と雪、そして彼らの見事なコントラスト。
決して美しさに魅了されてはいけない。
妹へ 猫又大統領 @arigatou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
どきどき❤心境報告(引きこもり)/猫又大統領
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 14話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます