こっつんさん
とある20代の女性から聞いた話です。
私の母は地元ではそこそこ大きな病院の看護士をしています。
その病院では『こっつんさん』と呼ばれる存在がいるらしいんです。
こっつんさんはその病院の職員であれば皆がしる存在なのだそうで、何もないところからコツンコツンと松葉杖を突く音が聞こえてくることからこっつんさんと言われているとのことでした。
稀にですが、書類等を保管している倉庫でコツンコツンと音がして、怖いので少し経ってから音が止むのを待って部屋に入ると積んである書類が数枚だけ床に落ちていることもあったみたいです。
ある日母は夜勤のシフトで休憩時間が一緒になった同僚のAさんとタバコを吸いに行こうという話になりました。
病院の裏の方に死角になるような場所があり、そこでいつもこっそりとタバコを吸っていたそうです。
2人でいつもの場所に向かうため暗い廊下を歩いているとコツンコツンと例の音がしてきました。
あーまた音がするなぁなどと考えていると
コツンコツンコツンコツン
と徐々に音が近づいてきているのがわかりました。
すると同僚のAさんが
「あ、これちょっとヤバいかも」
そう言い母に急ぐように促し小走りで逃げるように喫煙所へ向かいました。
なんだろう、どういうことなんだろうと困惑しましたがとにかく言われるがまま着いていき、無事喫煙所に着くとAさんは
「たぶんもう大丈夫」
とだけ言い何があったかについて詳しくは話してくれませんでした。
こっつんさんは松葉杖の音がすること、稀に倉庫の書類を落とすということはあったものの、人に何か危害を加えるといったことは聞いたことがなかったそうで、何故その時だけは危険で逃げなければならなかったのかは今でもわからないそうです。
こっつんさん 完
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