実話怪談集
片早 進
九州の祖父母の家で
20代前半の関東にすむ接客業の女性から2つお話をお聞きしました。
私は霊感があるんです。
私だけでなく、東北生まれ母と母方の祖母にも霊感があり、祖母いわく母方の家系には見える人が他にも何人かいたみたいなんです。
父方の家族は霊感はなくあまりそういったものを信じていないみたいでした。
ただ引き寄せてしまう特性があるのか、九州にある父方の祖父母の家にはいつも霊的なものが居たんです。
ベタに落武者の霊が和室の隅に立っていたり、階段の踊場で紺色のシャツに白いTシャツ、ジーンズを履いた90年代始めくらいのファッションの男の人が立っていて2Fに上がれないこともありました。
小学4年生か5年生の夏休みのことでした。
昼過ぎに縁側に座りながらボーッとしていると父方の祖父母の家の近くに住むミサちゃんが遊びにきました。
ミサちゃんは同い年で幼稚園の頃からの友達でした。
きっかけはよく覚えていませんが、家の前にある公園で遊んでいた時に一緒に遊ぶようになり、近所だったこともあり家族ぐるみで仲良くなりました。
「公園であそぼー!」
そうミサちゃんに誘われ、私は快諾し一緒に家の前の公園へと向かいました。
あまり大きい公園でなく、すべり台、ブランコ、砂場とベンチが1つあるくらいでした。
ブランコを2人で漕いだり、すべり台を逆走したり、砂場できれいな泥団子を作ったりとても楽しく過ごしました。
途中祖父が家のこちらを見ていたので、一緒におーいと手を振ると祖父も笑顔で手を振り返してくれました。
そんなこんなで時間は過ぎていき夕方になり、祖父が家からこちらに迎えに来ようとしているのが見えました。
するとミサちゃんは
「もうそろそろ帰るね。バイバーイ!」
と帰って行きました。
私はミサちゃんの背中に向かって
「バイバーイ!」
と声を掛けたところで祖父が公園までやってきました。
すると祖父は
「誰としゃべってるんだ?1人で遊んでいたんだろう?」
と言うのです。
私は祖父の言っている意味がわかりませんでした。
「ミサちゃんと遊んでたんだよ。」
と言うと祖父怪訝な顔をし
「何を言っとるんだ?もう帰るよ。」
そう言い私の手を引き家へと戻りました。
その後はいつものようにご飯を食べ、お風呂に入り、テレビを見たあと母に促され一緒に寝泊まりをしている1Fの和室へと向かいました。
布団へと入ると母が
「あのね、ミサちゃんのことなんだけど… 」
と話を始めました。
母いわくミサちゃんは夏休みに入る直前に事故に遭って亡くなっていたというのです。
子どもの私に伝えるのは酷だと考えて黙っていたそうですが、今日のことで何かあったら困ると思い話してくれたそうです。
悲しさと驚きはありましたが、同時に最後に会いに来てくれたんだと嬉しく思いました。
中学生の時のことです。
いつもの祖父の家の寝室で寝ていましたが、夜中にトイレに行きたくなり起きてしまいました。
暗い中で少し恐怖感がありましたが、もう中学生なのに親を起こして付いてきてもらうなんていうのは恥ずかし過ぎるので1人トイレへと向かいました。
用を済ませ部屋に戻ろうとすると何かうめき声のようなものが聞こえてきました。
見に行くべきか悩みましたが何かあっては困るので、こっそり様子だけ見に行こうと音のする方へ行ってみました。
すると玄関で祖父母の家で飼っていた犬が外に向かって唸っていたのです。
小型犬でいつも大人しく、唸ったり吠えたりはめったにしない。
唸ったり吠えていても、ダメだよと声を掛ければすぐに静かになるお利口さんなはずなのに、その時は声を何度掛けても唸ったままでいたんです。
おかしいと思い唸る先を見ました。
祖父の家は引戸ですりガラスでした。
そのすりガラスの向こう側に得体の知れない何かがへばり付くようにしてこちらを見ていたんです。
それはスライムのようなウネウネ、グニョグニョしたような体で身体中に目がいくつもあって、それが何なのか全くわかりませんでした。
でも普通でないことは確かで、恐ろしくなり私は犬を抱えて寝室へと走って向かいました。
寝室に戻るとすぐさま布団を頭まで被りブルブル震えていましたが、いつしか眠りについてしまいました。
朝になり母にそのことを伝えましたが、そういうのは見たことないなぁと不思議そうにしていました。
それ以来その妖怪のようなそれを見ることはありませんでした。
今となってはあれはなんだったのかとても気になっています。
九州の祖父母の家で 完
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