【完結済】もしクラスで一番可愛い女の子と偽カップルになったなら?〜物理的距離、ほぼ夫婦。身体的距離――まで縮めて来るなぁ!!〜
如月ちょこ
第一章 偽カップル――のはずなのに
八神蒼は断りたい
第1話
僕はただのしがない一人暮らしの高校生。
今日は、高校の入学式だ。
もともと陰キャの僕は、別に自己紹介で笑いを取ろうとも、クラスの一軍になるために高校デビューしようだの、そんな考えは微塵も持っていない。
別に男友達がいないボッチでもいいかな〜、と思っている。
友達がいることに越したことはないんだろうけど。まぁ、友達がいないのには慣れてるし。
なんならいじめられるのも慣れてるし。まぁそれは……できればごめんだけどね。
そんな事を考えていると、俺が今日から通う学校、『不知火高校』に到着した。
門をくぐって中に入ってみると、沢山の人。人の海みたいだな。
そんな中、よくよく見てみると意外と友達同士で来ている人が多いみたい。
グループで固まって張り出されているクラス表を見ている人が多い。
もうこの時点で一人で来てる僕は少し劣等感を感じてるんだけど……。
っとそんなことは置いといて、僕もクラスが何組なのか見てみようか。
僕の名字は『八神』だから、……まぁ最後の方だよな。
えーっと……? あった!! 5組だ!
………えー5組……。1組だったら入学式とかまたずに先に入って座っておけるのに……。
決まったことだし、もう変えられないか。じゃあいいや。しゃーないしゃーない。
それに、今見つけたけどこのクラスで良かったかもな。
自分のクラスを発見した僕は、長い長い階段を登って4階の1年5組の教室へ行く。
行く道中にもグループで固まってる人がいっぱいいて、少し肩身の狭い思いをしたけど。
そんなんで肩身狭くなってたらこの先生きていけないか。
廊下を歩いていくと『1年5組』との表記がされた教室があったので、そこに入る。
すると、もう見るからに陽キャという人たちが、早速色んな人に話しかけていて、まだ1日目なのにグループみたいなものまでできていた。
当然、僕にはそこに入っていくコミュ力なんてあるわけがないので、大人しく自分の席に座る。
しかし、座るとすぐに、新しい獲物を見つけたみたいな目をした陽キャ君たちが僕の方にノコノコ近づいてくる。
辞めて? 僕にはそんなコミュ力ないんだけど?
「おはよ、今日から1年よろしくな? 俺は京極。君は?」
わぁでっかい。身長180くらいあるんじゃないか? というか見た目くっそイケメンだな? 羨ましい。
「……僕は八神。こちらこそよろしく」
「おう八神、よろしくな!」
と言って、僕と握手までして元の場所に帰っていった。
こういう時にコミュ力が少しでもあれば話を広げられたり、輪の中に入っていけたりするんだろうけど……。
まぁないからね。仕方ない。割り切ってるんだよ。そうじゃないと。
その後も何人かに話しかけられることはあったものの、その度に今回と同じような返事をしていたら、ついに僕には誰も寄り付かなくなった。
いいよ、別に。………うん。
その後は、入学式を終えて、今は5組の教室に戻ってきたところ。
ちなみに、ここの学校の校長ははずれだな。話が長い。話が短い人がよかったなぁ……。
「はい! じゃあ簡単に自己紹介してもらいますね! 順番はくじ引きだから!」
と言ったのは担任の反田。女教師だ。まだ若いから、元気がみなぎっている。
教師で元気な人って珍しくね?
「えー!」「最初はいや…!」
なんてクラスの人達が喚いているが、そんなことには構わずに反田はくじを引く。
「あーえーっとね、最初の人は朝神さん。どうぞ、前へ」
最初に選ばれたのは朝神さん。
見た感じだと、身長は155センチくらいで、どこか愛嬌がある。あと、珍しく青い色の瞳をしている。
これからクラスの中心になっていくんだろうなぁ……。という感じの女子。
すでに朝の段階で何人かと話して連絡先交換してたみたいだし。
それと、やっぱり可愛い。
「はい、朝神 舞です。こんちは。これから1年間よろしく! みんなにバシバシ話しかけていくけど、引かないでね?」
「おおお!!!」
朝神さんがみんなに話しかける宣言をしたからか、男子たちが湧いている。
もっとも、僕はそんなことに興味はないが。別に騒がなくたって……。そのうち話しかけてもらえるだろ。
「おいゴラ男子。なんだよその歓声は?まぁいいや次引くねー! ……はい、八神君。」
はぁ……。こういうときの悪運は強いほうだけど。僕が2番目かぁ……。
よりにもよってあんな陽キャのあとだなんて……。
まぁいいや。手短に終わらせないと。僕の自己紹介なんてたぶんもう聞かないだろうし。
さっきあんなに冷たい態度を取ったからね。……取りたくて取ったわけじゃないけど。僕のコミュ力のなさが為せる技だけど。
僕は覚悟を決めて前に出る。
「あー、……こんにちは。八神 蒼です。よろしく」
……凍りつく教室内の空気。それしか話すことはないのかと暗に言われているようだ。
やめてほしい。本当に話すことがないのだから。こちとら陰キャだぞ? なめるなよ?
「は、拍手〜!」
反田。いいこと言うじゃないか。僕の気持ちをくんでくれるなんて。
その声につられて、クラス内で拍手が起きる。ポツポツと。
あー。まぁいいや。端から諦めてたからな。
そしてすぐに止んだ拍手を聞きながら、僕は自分の席に戻る。
……舞。お前はなんで手をふってるんだ。あ、なんかメッセージが来てる。
『【舞】ふふっ、相変わらずだね』
『【蒼】うっせ。だからといって手をふるのはどうかと思うぞ』
『【舞】いいんじゃない? バレてないだろうし』
相変わらずなのはどっちか。鏡を見てこいと言いたくなる。
そして、なんですでに僕と舞が連絡先を交換してるかって? それはね――
「――だから夜ご飯作ってこなくてもいいって言ったよな?」
「まぁまぁ、お互いに一人暮らしなんだしさ? 別によくない? ほら、入るよー!」
学年一の美少女である彼女は、実は僕のお隣さんなのだ――。
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新作です。今日から1話ずつ更新していきます。
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