読書感想文

身ノ程知ラズ

読書感想文

夏休みも終わり2週間ほど経ったある日

1人の生徒が先生に呼び出されていた

「これはあなたの書いた読書感想文です

 最初から音読してみてください」

何かまずい内容でもあったか、疑問に思いつつ原稿を読み上げる

「僕はこの本を読んで真っ当に働こうと思いました

 この本のあらすじを紹介します

 主人公は普通の会社で働く普通の男性でした

 ある日その男性は同僚に誘われてパチンコを打ちに行きます

 そこで千円を入れると五万円まで増えました

 簡単に金を50倍にしたというなんとも心地よい体験をして

 主人公はその後1週間仕事中もずっとあの経験を噛み締めていました

 そこで今度は一人でパチンコを打ちに行きます

 すると最初の千円は返ってきませんでした

 千円を取り戻そうと打ち続けますがなかなか返ってきません

 その日は一万円を無駄にしてしまいます

 またあの日のような快感を得たいと次の日もその次の日も

 パチンコを打ち続け日に日に負ける金額もエスカレートしていきます

 貯金にも手を出しますがあっという間になくなり

 とうとう一文無しになった主人公は消費者金融に手を出します

 ですが消費者金融の金を使ったところで

 急に勝てるようになるわけではありません

 ただずっと負けているというわけでもありません

 たまに当たる時があるのです

 そしてその成功体験が鍵となってパチンコに対する

 金への執着心がヒートアップしていくのです

 ついにどの会社からも金を借りれなくなるまでに

 借金は膨れ上がりました

 これでようやく真っ当に働き始めるのかと思われましたが

 この主人公は完全にパチンコに脳を侵されていました

 闇金に手を出したのです、この手しかないと思ったのです

 ですが一発大逆転の当たりは無慈悲にも主人公の前を通り過ぎていき

 闇金への返済日に間に合わないようになります

 自宅に取り立てが襲ってきます

 彼らはドアをこじ開け主人公に強制的に保険に加入させます

 そして目隠しをさせられどこかへ連れていかれる主人公

 目隠しをさせられたままどこかに縛り付けられます

 首と太ももの付け根あたりに何か冷たい金属が当たっている

  気がした主人公はまさかと思い耳を澄ますと

 電車がこちらに迫ってきている音がします

 そしてその後は…という残酷な内容になっています

 まず僕は…」

「いや、そこまでで大丈夫です読んでくれてありがとう

 あなたの感想文は改善点が3つあります

 まず一つはあらすじが冗長すぎます

 もう少し短くコンパクトにした方が良いと思います

 二つ目は最初に感想文のタイトルと自分の名前

 読んだ本のタイトルぐらいは書きましょう

 そして最後はあらすじそのものについてですが

 ヘルマン・ヘッセの『車輪の下』はこんな文章ではありません

 原作をしっかり読んで書き直して再度提出してください」


 


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読書感想文 身ノ程知ラズ @mizoken

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