祖国
zakuro
プロローグ
屋上から晴れ渡った空を見上げていると、遠くで爆発音が聞こえた。
ミサイルが撃ち落とされた音。
もうすっかり、聞き慣れてしまった音。
日常の風景にいつもの天気。私の街では、雨は殆ど降らない。代わりに、最近はミサイルが降ってくる。
天気は晴れ時々ミサイル攻撃。
雲一つない青空に、余計な不純物が混ぜられるのは楽しいことじゃない。
「航空自衛隊様々だね」
誰が聞いているわけでもないけれど、ぽつりと呟く。誰が聞いているわけでもないけど、皮肉っぽくなったなと反省する。
私たちの国は、戦争に巻き込まれた。
みんなの日常は、それほど変わっていない。
振り返って北の方を見れば、遠くに海が見える。近くには航空自衛隊の基地があって、今日みたいに晴れた日なら、戦闘機が帰ってくるのが見えることもある。
そして、海の向こうには「敵国」がある。母の生まれ故郷の国。私にとっては知らない国。そして何より、この戦争を始めた国。ここからは見えないし、今となっては行くことも難しい。
それでも確かに存在している。その証拠に、今日もミサイルは飛んできた。
それが「敵国」だ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます