祖国

zakuro

プロローグ

 屋上から晴れ渡った空を見上げていると、遠くで爆発音が聞こえた。

 

 ミサイルが撃ち落とされた音。


 もうすっかり、聞き慣れてしまった音。


 日常の風景にいつもの天気。私の街では、雨は殆ど降らない。代わりに、最近はミサイルが降ってくる。


 天気は晴れ時々ミサイル攻撃。


 雲一つない青空に、余計な不純物が混ぜられるのは楽しいことじゃない。


「航空自衛隊様々だね」


 誰が聞いているわけでもないけれど、ぽつりと呟く。誰が聞いているわけでもないけど、皮肉っぽくなったなと反省する。

 


 私たちの国は、戦争に巻き込まれた。


 みんなの日常は、それほど変わっていない。


 振り返って北の方を見れば、遠くに海が見える。近くには航空自衛隊の基地があって、今日みたいに晴れた日なら、戦闘機が帰ってくるのが見えることもある。

 

 そして、海の向こうには「敵国」がある。母の生まれ故郷の国。私にとっては知らない国。そして何より、この戦争を始めた国。ここからは見えないし、今となっては行くことも難しい。


 それでも確かに存在している。その証拠に、今日もミサイルは飛んできた。

 

 それが「敵国」だ。

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