ハケン2
丸子稔
第1話 女好きレオ・フェルナンデスが今年もやってきた!
──さてと、ここの仕事も飽きたし、そろそろ別の仕事でも探すとするか。
派遣社員のレオ・フェルナンデスは、約半年間勤めた自動車工場を辞める決心をし、新たな派遣先を探すことにした。
──ここは男性ばかりだったから、次は女性の多い職場にしないと、ストレスが溜まって仕方ないね。
無類の女好きであるレオは、現在働いている男性中心の職場に、ほとほと嫌気が差していた。
──女性がたくさんいる所といえば、やはり食品関係だな。となると……そうだ! 今年もあそこに行こう。
仕事が終わると、レオはすぐに登録している派遣会社の担当者に電話した。
「レオですけど、去年行った菓子工場って今、空きはありますか?」
「はい。今なら、すぐに入れる状況ですが、いかがなさいますか?」
「じゃあ、今月いっぱいでここを辞めて、来月から入ります」
「わかりました。では先方に、そのように伝えておきます」
「よろしくお願いします」
──よし! とりあえずこれで次の派遣先は確保できた。ああ、早く来月にならないかな。
昨年働いた女性の多い職場に、早くもレオの心は傾いていた。
月が替わり、菓子工場への出社初日を迎えた朝、送迎バスを待っているレオに、ある男性が声を掛けてきた。
「おお、レオじゃないか。久しぶりだな」
「協田さん、お久しぶりです」
昨年レオと同じ部署で働いた協田実は、イケメンで頭が良く、そのうえ女性への気配りを欠かさないことから、職場にいるほとんどの女性が彼に好意を抱いていた。
「お前、去年女性から散々嫌われてたのに、また来たのか?」
「今年はそうならないよう、むやみやたらと女性に声を掛けるのは控えようと思います。ところで、協田さんてたしか、去年作家デビューしましたよね? それなのに、なんでここにいるんですか?」
「無名の新人作家が、作家の仕事だけで食べていけるほど、この世界は甘くないんだよ」
「そうなんですか。じゃあ、今年も協田さんと一緒に仕事できるんですね」
「ああ。ちなみに俺以外にも、去年いたメンバーはたくさんいるぞ」
「誰がいるんですか?」
「男性は、坂本、坂川の坂坂コンビに、でくの坊の木戸、声の渋い木本、仕込みをしてた松岡で、女性は、藤原さん、大重さん、大本さん、吉田さんの熟女軍団と、今服、岡、中村、森、日笠の若手軍団だ」
「えっ! 木戸ってたしか、去年途中で辞めましたよね?」
「ああ。でも、そんなことはまるでなかったかのように、しれっとした顔して今年ものこのこやってきたぞ」
「あいつ、図体がでかいだけで、ほんと役立たずですからね。今年も途中で辞めてくれるといいんですけどね」
「でも、あいつって、女好きだっただろ? そういう面では、レオと気が合うんじゃないか?」
「いやいや、あんな奴と気が合うわけないじゃないですか。というか、木戸のことはどうでもいいので、女性の情報をもっと教えてくださいよ」
「はははっ! お前は相変わらず、エロエロだな。まあ、それでこそ、レオだよ」
「私からエロを取ったら、何も残らないですからね。それより、早く女性の近況を聞かせてくださいよ」
「わかったから、そう急かすな。じゃあ、まずは藤原さんだが、彼女は去年と同じように坂川に付きまとわれて、ほとほと困ってるよ」
「あいつ、性懲りもなく、まだそんなことやってるんですか? よーし、今日会ったら、早速懲らしめてやります」
「まあ、程々にしといてやれよ。次に大重さんだが、彼女はダイエットに成功して、去年より数段奇麗になってるぞ」
「マジですか? そういえば、あの人、可愛い顔してましたもんね。よーし、じゃあ今年は大重さんを狙うのもありですね。ぎゃははっ!」
「狙うのはいいが、奥さんにバレないようにしろよ。次に大本さんだが、彼女は班長の古田さんが辞めて、かなり落ち込んでいるよ」
「えっ、古田さん、辞めたんですか?」
「ああ。なんでも身内が事業を起こしたらしくてな。古田さん、その手伝いをするみたいなんだ」
「へえー。菓子工場の従業員で終わるより、新たな夢に賭けたわけですね」
「まあ、そいうことだ。次に吉田さんだが、彼女は相変わらずのマイペースぶりで、近くで作業する人は皆、迷惑してるよ」
「吉田さんの場合、変わりようがないですからね。私も彼女の近くで作業する時は気を付けたいと思います」
「次に今服だが、彼女は今も木本と付き合ってて、いつも幸せそうな顔してるよ」
「へえー。あの二人、まだ続いてたんですね。そんな幸せそうなら、今年は彼女と揉めることはなさそうですね」
「まあな。次に岡だが、彼女は今も坂本さんと付き合ってるんだけど、どうやら彼は日笠さんのことも好きみたいなんだ」
「それは、去年、坂本さんから直接聞いて知ってます。あの人、真面目そうな雰囲気を醸し出していますけど、本当はとんでもないスケベ野郎ですからね」
「そうなのか? 人は見かけによらないものだな」
「あの人、自分のアソコのことを冷凍バナナとか言って自慢している、ちょっと痛い人なんですよ。まあ、そういう私も、自分のアソコをフランクフルトって自慢してるんですけどね。ぎゃははっ!」
会って早々、いきなり下ネタを披露したレオに、協田は蔑むような目を向けていた。
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