恋をしても打ち明けられない御伽の国の物語

明鏡止水

第1話 我慢

そんなことできませんッ!!


黒いマントを羽織った漆黒の髪の少年と、桃色の髪を持った白い衣装の少女が、ガラスの大きなカンテラのような容器に入れられて、しかしそのカンテラは内部が仕切られており、お互いが触れ合うことができない。ガラスの鳥籠。それも番を分けるかのような。


ふたりは、ほんのすこし、ちょっとずつ、愛し合っていた。


黒いマントのクロキはいたずら好きの神様、ロキを崇拝していた。

桃色の髪の乙女のトキは、アルテミスを。処女神としての彼女を崇め、一生を誰とも交わらず、清い信仰を胸に生きると決めていた。


しかし、水の波紋からの使者により、占術から。

眠りの国のクロキと桃の国のトキの結婚が決まってしまったのだ。

クロキは残忍な性格でいままで仕えた者たち全員に暇を出した後、気に入らない者だけ残し拷問しているという噂があるほど恐ろしい少年だった。

一方、仙桃のなる国で生まれ、美しく育ち、異国の神を信仰することにも許された自由なトキは、豊満で熟れた果実そのもののようだった。


ふたりの婚儀は両者の思いなど気にしないで進んでいた。

眠りの国で、クロキは思っていた。こんな、黒い髪に醜い顔色をした自分に、女の子がときめくわけがない。体も矮小で、肋骨が透けて見えるくらいだ。誰がこんな痩せ犬を愛してくれようものか。


一方、桃の国のトキは初夜を恐れていた。残忍な相手だとか、そういうのではない。女の子にとっては、いくら説明されても初めはこわいもの。そんなふうにトキは豊かな胸に手を当てながら、深く、呼吸をしていた。


どうせなら


どうせなら


恋をしてしまえばいいのに

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