転生した俺のスキルはセーブとロード〜ある日貴族の姉妹を盗賊から助けた俺はその姉妹の重すぎる愛から逃げられない〜
シャルねる
いつも通りの日常
アベル。
それが今の……今世の俺の名前だ。
俺自身もよく分かってないが、15歳、この世界では成人なんだが、15歳になった頃、スキルを授かると同時に、前世の記憶を思い出したんだ。
正直、クソみたいな人生だったと思う。ろくに親孝行も出来なかった、クソみたいな人生だ。
「父さん、朝ごはん作ったから、早く起きてよ」
そんなクソみたいな前世を少し思い出しながら、俺は眠っていたこの世界でのたった一人の親を起こした。
「ん、おぉ、アベルか。いつも、ありがとうな。……何度も言うが、本当に、俺の事なんか気にせずに、いつでもこんな田舎村出ていってくれていいからな」
父さんは毎日、同じようなことを言ってくる。
正直、俺はあまり覚えていないが、母さんは俺がちっちゃかった頃に事故で亡くなったらしい。
俺の記憶が曖昧ってことは、俺がまだ物心もつく前に母さんは亡くなったんだと思う。
男手一人で子供を育てるなんて、俺には想像できないくらい、大変なはずだ。
前世の未練として、前世で出来なかった親孝行をしたいって気持ちはもちろんある。
ただ、俺は前世以前に、この人に、俺の父さんに、少しでも恩返しをしたいんだ。前世なんて関係なく、少しでも、幸せになって欲しい。
「何度も言うけど、俺はここの生活が気に入ってるんだ。畑仕事は大変だけど、それに見合った達成感と美味しい野菜やパンが食べられるし、別に父さんのことを気にして俺はここにいるわけじゃないから」
だから、俺はそう言った。
せっかく、スキルなんかがある異世界なんだ。
もっと世界を見たいって気持ちが無いとは言えないが、この生活に満足してることは本当だ。
前世では絶対に出来なかった生活だし、逆に新鮮で、楽しいんだ。
「そうか、だったら、いいんだがな」
父さんは苦笑いになりながらそう言うと、俺が作った朝ごはんを美味しそうに食べてくれた。
ふふっ、それに、俺だって、適度に森とかには入ったりしてるしな。
この世界は危険な世界で、魔物や、魔獣は当然いる。
そんな所に、ろくな戦闘スキルも無しに入るなんて、自殺行為。
それは分かってるんだが、俺には止められなかった。
俺のスキルはセーブとロード。
セーブした地点にロードしたいと思えば、即座に戻れる優れものだ。……なんなら、俺が死ねば自動的にセーブした地点に戻してくれるしな。
……なんで分かるのかって? ははっ、森に入って、魔獣や魔物に見つかれば、当然襲われる。
それは、不意打ちで、首を一撃で掻っ切られることだってあるんだ。
まさに、狼系の魔獣に、俺は首を一撃で掻っ切られた。
その時は本当に絶望した。
急に、何も考えられなくなって、最後の一瞬、思い出したんだ。……あっ、これ、前世で死んだ時と同じ感覚だって。
あの時、最後に父さんの顔が少し浮かんで、俺は死んだ、はずだったんだ。
なのに、俺は目を覚ました。
最後にセーブした地点で。
二度目の死。当然、怖かった。
でも、俺はそれでも、戻れることを知って、また、森に向かった。
月に一度来る、行商人に魔物や魔獣の素材を売るために。
少しでも金を稼いで、父さんに、一度でいいから、味わったこともないような贅沢をして欲しかったから。
まぁ、昔の話はいいんだ。
「じゃあ父さん、今日も畑仕事が終わったら、適当にブラブラしてくるね」
「分かった。気をつけろよ」
「うん」
そう言って、家を出た俺は、さっさと自分の分の畑仕事を終わらせて、森に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます