強生社会
刻堂元記
強生社会
社会における死生観というのは、時代に合わせて変化する。それは近未来でも例外ではない。個人の生存権は、社会の共有財産だという考え方が強まり、国全体に普及したことで、自殺や安楽死の試み・ほう助・発言の全てが罪となり、牢屋で一生を生きる事が強制された近い未来。人々は場所を問わず、自死を連想させるような言動が、取れなくなっていた。
だが、誰もが楽しい人生を送れているわけではない。中には、難病や精神的な病気を理由に、自らの死を望む者さえ多数いる。しかし、他殺を行えば捕まり、病気で死ぬまで牢屋に入れられる。したがって、自らの人生を幸せだと感じる人々は他殺をするはずもなく、死にたいと願う人々でさえも他殺を躊躇する。そんなクソみたいな社会を一部の人々は、『強生社会』と呼んだ。
でも、多くの人々は違っていた。社会そのものは、まさに理想郷。そう思っていたからであり、事実、国内の犯罪発生率は年間0.001~0.002%。自殺や安楽死の割合に限って言えば、毎年0%だった。これは全く不思議なことではない。あらゆる場所に設置されたツールが人々の言動を監視し、彼らの中に紛れた『監視人』が犯罪の防止のため、事前に動くことが出来上がった社会では、むしろそれが普通だろう。
そして、そのような社会の中では、自らの生を最後まで全うすることを、国民の義務とするため、ある言葉が広まるようになった。
【何があっても強く生きよ。苦しみもまた、人生の試練に他ならぬ】
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