うつくしの星夜はやがて死へ向かう
ナモナシのナナシ
第1話 銀の瞬くうつくし夜
神が織られた夜のヴェールに、銀の星粒が縫い留められている。乳白の月がその真中に誂えられており、隣に並ぶ人の輪郭もはっきりと見えるほどに明るい。星を尊ぶこの國で、この上なく晴々しい夜だ。
神殿の広大な庭では、星々を讃える名分の豪奢な宴が催されていた。星の欠片を織り込んだ絹衣装、それを纏った見目端正な女性たち、その身体を撫でる男共の手、そこには星の石を見せびらかす為の指輪が嵌められ、奴等が囲む卓にはこれから食い散らかされるご馳走の数々。反吐が出る。
絢爛たる装飾に囲まれた一番奥、何よりも煌びやかな座で、その男――星の神子は冷やかに全てを見下ろしていた。その横には金糸の髪の麗しい神官が控えており、ソイツは杖を携えていて、杖先には紅い大きな星鉱物でできた蕾が飾られている。星の光の魔力を帯びた魔具だ。他にはありふれた紅い星片の剣持ちしかいない。アレさえ離れれば神子の喉元まで辿り着ける、私なら。
黒い星鉱物の短剣を握り直す。チャンスも時間も限られている。
私は神子を殺さねばならない。そのために今夜これから、私は死にに行く。
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