第13話 恐るべき健康診断

「はぁ~~~………」

 珍しくぐったりとデスクに沈み込む澤山。そんな上司の姿を見て、わらわらと部下たちが寄ってくる。


「ど、どうしたんですか澤山さん?」

「いや…大したことじゃないんだが…その、健康診断の結果が…」

「あ、返ってきたんスね。どれどれー……うわ、まさかのオールC」

 安保が澤山の手元を覗き込むと、検査結果の欄には「C:要経過観察」の文字がずらり。中には「要再検査」という結果もあり、到底健康とは言えない診断結果だった。


「はっはっは、笑えてくるぜ…健康に気を使ったことは正直無かったんだが、流石にまずいと思ったよ…」

「そりゃあれだけエナドリとコーヒー飲んで、夜中のラーメンで一日をシメてりゃこうなりますわな」

「ド正論言うな安保ぉ……」

「えぇと、健康を意識するいい機会だったと思いましょう…!」

 どんどんデスクにのめり込んでいく澤山に、馬路はわたわわとしながらもなんとかフォローを入れる。


 土師も、安保の正論ビームから上司を守るべく、話を別の方向に切り替えた。

「そ、そういえば馬路さんも結果返ってきてましたよね、どうでした?」

「私は、ほぼAでしたね。視力だけどうしても悪くて…C判定でした」

「まぁ…馬路さん、作業に集中すると、画面にかじりつきそうな勢いで猫背になってますもんね…」

「土師くんは?」

「あー、僕はAとBが混じってますね…結構ジャンクな食べ物とかも好きですし…」

「んふふー、将来お腹出ないように気を付けなきゃだねぇ、あっという間ですよー?」

「むっ、そういう安保さんはどうなんです?」

 によによと笑いながらからかってくる安保に、土師が言い返す。


 すると安保は、自分のカバンから書類を取り出し、それを堂々と掲げて言った。

「オールS」

「「オールS!?!?!」」


 ぎょっとした土師と馬路は、慌てて安保の診断結果を覗き込んだ。

「そんな判定聞いたことないんですけど?!」

「なんか、健康すぎて怖いから、今度血液調べさせてくれって言われた」

「そのレベルなんですか?!研究対象?!」

「安保さん人間卒業?!」

「いやヒト科ヒト属ですが」



 ぎゃあぎゃあと騒ぐ部下たちを尻目に、澤山は「若いって、いいなぁ…」と呟きつつ野菜ジュースを飲むのだった。

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