第12話 良い知らせと悪い知らせ

 営業係では最近、とある言い回しが流行っている。


 ~馬路の場合~

「澤山係長、良い知らせと悪い知らせ、どちらから聞きたいですか?」

「おー馬路か、じゃあ、良い知らせから頼むわ」

「はい。では、…良い知らせは、新規契約が取れました」

「おお、やったな! で、悪い知らせは?」

「契約開始まで日がなく、澤山さんに承認いただきたい書類が山ほど…!」

「大丈夫だ任せろ!!」


 結果:平和



 ~安保の場合~

「澤山さーん、いい知らせとわるい知らせ、どっちから聞きたいです?」

「うぉぉ、安保か…じゃあ、悪いほうから頼む」

「わるい知らせは、新規アポが5件取れたことです」

「お! アポ取り苦手なお前が頑張ったな!……ん? じゃあ良い知らせは?」

「アポ取りのご褒美に、澤山サンがこの後の営業引き取ってくれるって言いました」

「言ってねぇよ?!」

「言いました」

「捏造するな!!!」


 結果:力押しを試みる



 ~土師の場合~

 Prrrrrrrrrrr……

「はい、こちら営業係…なんだ土師か、どうした? 今日の打合せ終わったのか?」

『澤山さん! えーっと、良い知らせと悪い知らせがあるのですが、どっちからお伝えしましょう?』

「よーし、良い知らせから聞こうか」

『はい、良い知らせは、打合せが無事に終わって、出張講座の継続実施が決まったことです!』

「よくやった! あそこは売上いいし、これで一安心だ。で、悪い知らせは?」

『……事務所に戻ろうと電車に乗って、ウトウトしてたら知らない駅に着いて…「きさらぎ駅」って書いてるんですけど…』

「どこに迷い込んでんだお前?!? とりあえずそこから動くな!! おーい安保ぉぉぉ!!! ヘルプだ土師を助けてやれ!!」


 結果:何かに巻き込まれる(無事に帰れた)

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