金木ハイジは小説を書いている 〜小説を書くために生活の全てを捧げた高校生が作った部活にはなぜか4人の女子生徒がいる〜
お小遣い月3万
第0話 新しい世界
母親が昔から使っていたお古のノートパソコンを貰った時は、新しい世界が開けたように思えた。
これでぼくは何にでもなれる。正義のヒーローにだって、勇者にだって、魔王にだって、宇宙人にだって。
なり方は簡単。誰にだってできる。ワードを開けばいいだけ。
パソコンの画面には白紙が表示される。
そこになりたい自分を投影させて、物語をザザザっと書き上げれば、……と思っていたのに、初めてワードを開いて何かを書こうとした時は、マラソンを走った後のように何も思いつかなかった。
とりあえず文字を打とうとしたけど、キーボードに乗った自分の手が赤の他人の手のように言う事を聞いてくれない。
14年間もぼくの言う事を聞いてくれたっていうのに、なんでキーボードの上では言う事を聞いてくれないんだよ?
そりゃあ慣れてねぇーもん、仕方がねぇー、とぼくの右手と左手が言うから、まずはタイピングを練習する事にした。
好きな本をワードで書き写す。
パソコンを打つ時、人差し指しか動かなかったのに、2冊ほど書き写した頃にはキーボードも見ずに文字が打てるようになっていた。
10冊ほど書き写した頃にはキーボードの文字が消えかけていた。
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