日本人がすべきこと
飛鳥 竜二
第1話 出版
近未来社会派小説
202△年、後に日本の改革が始まるきっかけを作った一冊の本が出版された。
タイトルは「日本人がすべきこと」
著者は、西郷隆志となっているが、覆面ライターだ。だが、内容は強烈だった。書籍だけでなく、ネットでも多くの読者を引き付け話題となっていた。
第1部 政治改革
その1「国会議員を減らし、立法及び行政監査の機能をもたせる」
国会議員を100名に減らす。各都道府県から1名ずつ、残り53名は全国から公募し、ネット投票とする。
※ネット投票ができない人は、地方選挙管理委員会に出向き、そこでネット投票を行う。国会議員は、立法及び行政監査の任にあたる。議長は、国会議員による互選とし、任期は1年とする。権力の集中を避けるために再選は認めない。
その2「政党は解散。国会議員は個人の力で任にあたる。立法は個人が原則だが、プロジェクトチームを組むことは認める」
今までの数に任せる政党政治ではなく、個々の力で立法することができる人材を国会議員として選出できるようにする。そのため、立法ができない国会議員は次回の選挙で落選の憂き目にあうことになる。数の論理ではなく、理の論理を重視する。
その3「国会議員の任期は4年。ただし、2年ごとに半数の議員を改選する。選挙に出馬できる者は、18才から70才とする」
最初の選挙で、全国区で当選した50名は2年の任期とし、次回選挙後は4年とする。国会の解散はない。
その4「国会は、月最大20日間の開催とする」
国会の開催は、年間を通して200日とし、月あたり最大20日間とする。緊急の場合は、半数以上の賛成をもって開催することができる。
その5「予備費等の予算執行に関しては、国会の承認を得ることとする」
災害時等で、予備費の予算を執行する場合は、国会議員の過半数の賛成を事前に得なければならない。ネットでの同意を得ることも可能である。ただし、大災害・防衛等やむを得ない場合に限り事後による承認を認める。
その6「行政の長は、直接選挙とする」
首相をはじめ、各省庁の大臣・長は国民の直接選挙で選出する。その1と同じように全国から公募し、ネット投票とする。選挙に出馬できる者は、70才未満とする。国会議員の経験は不問とする。任期は4年。再選も認める。
その7「選挙活動はネット上でしか認めない」
今までのような街頭演説や集会活動・選挙カーでの呼びかけ、電話等での活動を一切認めない。ネット上の選挙HPでの主張のみとする。選挙違反が発覚した場合は、当選は無効となり、次点の候補者が繰り上がり当選となる。
その8「ネット投票をしない場合は、翌年の所得税を10%加算する。ただし、各選挙委員会が認める場合はその限りでない」
投票は国民の義務である。その義務を履行しない場合は、ペナルティを受けるのもやむを得ない。
その9「献金や寄付は一切認めない」
選挙で選出された議員に対する献金やパーティ等の寄付を一切認めない。議員の生活は歳費だけでまかない、海外出張等の必要経費については、別途事務局に理由を付して請求し、領収書等を提出して精算した上で公表する。
その10「各行政機関は、行政監査委員を任命し、その監査委員の意見を重視する」
行政機関は、3名の行政監査委員を任命しなければならない。男女別に公募し、男女混合としなければならない。対象は、30才以上70才未満で、公務員および法人代表者を除く。任期は1年とし、再任は認めない。
行政監査委員は、非常勤の特別公務員として遇され、月に1度定例会議を開催し、行政監査を行う。行政監査委員から異議が出た場合は、行政機関は事業の見直しをしなければならない。なお、行政監査委員が政治組織や反社会活動組織等に所属している場合は、退任しなければならない。
第2部 教育改革
その1「教育は無償とする。ただし、私立学校は対象外とする」
幼児教育から大学院まで、私立学校を除き教育に関する費用は、全て無償とする。給食や修学旅行等の社会見学も同様である。なお、学校種別に年齢制限を設ける。
小学校 15才 中学校 20才 高等学校 25才
大学 30才 大学院40才
※私立学校については、公立学校と同様の補助を行うが、私立学校特有の経費については補助の対象外とする。
その2「児童生徒は、通学と通信のいずれでも選択することができる」
通信の授業を選択した児童生徒は、1週間に一度、サポートスクールや各学校にあるサポートクラスにおいて指導を受けることとする。在宅においての指導も可能だが、児童生徒が拒否または不登校の場合は、地域に設定されるサポート施設の指導を受けることも可能とする。
その3「義務教育において飛び級と留年を認める」
成績優秀者については、本人の意志を確認の上で飛び級を認める。
留年については、欠席率が半数以上もしくは成績が上位者と比較して半分以下の場合は留年、またはサポートスクールへの転校のいずれでも選択できる。義務教育は中学3年までとする。
その4「特別支援学校をサポートスクールとする」
サポートスクールは、5人を上限とする少人数学級とし、対象児童生徒に応じ、学級の人数を各スクールで定めることができる。(1人学級も可能)サポートスクールは、20才までとする。また各学校にある特別支援学級をサポートクラスとし、これもサポートスクールに準じる。
飛び級の児童生徒を対象としたサポートスクールも認める。
その5「普通学級の定員は20名以下とする。なお、複式学級は設定しない。小学校段階でも教科担任制を推進し、複数の視点で児童生徒を指導する。また小中一貫校を増やし、教員の協力・交流を行う」
教職員の定数を大幅に増やし、職場環境の改善を行う。現在、休憩時間をなかなか取れない学校現場でも、専科教員を増やすことで、一日の1時間以上の空き時間を作ることができる。小学校低学年においても外国語・音楽・図工・体育のいずれかを専科教員が受け持つことができるようにする。
第3部 経済改革
その1「最低賃金を引き上げる」
各地域で設定されている最低賃金を全国一律とし、労働力の都会集中を避ける。また外国人労働者も同額とし、安い外国人労働力に頼っている企業をなくす。
外国人が離職する場合は、雇用者は帰国もしくは転職先の斡旋を行うなど、不法滞在者をださないようにしなければならない。雇用者が死亡・倒産等で対処できない場合は、地方自治体がその責を負う。
その2「入札制度を変更し、抽選とする」
今までの入札制度を変更し、発注価格を提示の上で、その価格で受注が可能な企業間で抽選を行う。各公的機関が一度受注した企業は次の抽選には参加できず、多くの企業が受注可能なシステムを構築する。
その3「災害等において、収入が半減以下となった場合は、前年度の収入の8割を補償する」
農業・水産業・林業・商業・工業従事者が災害等において、収入が半減以下となった場合は、前年度の収入の8割を補償する。ただし、補償の対象は、前年度に税金を納入した者とする。
法人においても、税金納付済みの法人に対しては補償の対象となる。
その4「配偶者控除は廃止する」
パート労働者のネックとなっていた配偶者控除は廃止とし、所得に応じた税金を納付することで、補償の対象となる。
その5「医療費は年間100万円まで補助する」
税金納付者及びその家族に関しては、医療費を年間100万円まで補助する。上限を超える医療費が必要となあった場合は、無利子貸与とする。
その6「日本国内において起業する新規事業者に対しては、3年間各種税金を免除する。また、外国にある工場等を国内に移転する場合にも、その工場関連の税金を3年間免除する」
国内での就労者を増やすために新規事業者を優遇する。日本の技術力確保及び日本国内での自給率を上げるためである。
その7「国が奨励する産物・工業製品を扱う個人・法人に対しては、扱う規模に応じた奨励金を交付する」
自給自足を促進するために、前年度に自給率が50%以下の産物。工業製品を扱う個人・法人に関しては、扱う規模に応じた奨励金を交付する。
現時点での対象は、小麦・大麦・大豆・でんぷん・畜産用肥料・半導体・鉄鋼とする。
第4部 外交・防衛対策
その1「国境線を確定し、紛争を避ける」
離島の無人島においては、所有権を国連に委ね、その周辺海域は公海とする。
その2「武力は防衛に徹し、国外での武力行使を行う場合も防衛に限る」
他国との友好関係を構築することが外交の第一である。万が一、他国との友好関係に悪化が生じて、他国から侵略等の攻撃があったと確認できた場合は、直ちに防衛のために武力を行使して反撃することを認める。攻撃探知能力の向上や反撃能力の向上をはかる。そのことで、他国からの侵略を防ぐ。
その3「防衛隊を組織し、他国の動向等についての監視活動を主たる業務とし、緊急事態の際には、防衛のための武力行使をすること、及びその被害等の対応並びに災害時の救援活動を行う」
自衛隊を発展的に解消し、防衛隊を組織する。年間予算はGDPの2割を超えないものとする。
第5部 生活支援・少子化対策
その1「児童手当を増額する」
第1子誕生の際には、祝い金を10万円。第2子誕生の際には、祝い金20万円というように、子どもが産まれる度に、祝い金を増額し交付する。また毎月の児童手当を一人につき3万円とし、その子が15才に到達するまで支給する。
その2「母親の産休を1年間とする」
産前・産後休暇を合わせて1年間とし、継続した期間とする。また所得の8割を補償する。
その3「夫婦ともに最大3年間の育児休業を認める」
対象の児童が小学校入学時までに、夫婦ともに最大3年間の育児休業(以下育業)を認める。期間は半年ごとに取得することができる。所得の補償は1年目は8割、2~3年目は5割とする。同時期に夫婦が育業を取得することも可能である。
その4「物価変動に応じて年金の見直しを毎年実施する」
年金が目減り、もしくは増加しないように物価変動に応じて年金額を決定する。
その5「生活保護受給の要件を緩和する」
生活保護受給の対象者を拡大する。持ち家や自家用車所有者であっても、必要最低限の範囲であれば生活保護の対象となる。
その6「空き家対策をし、空き家を減少させる」
3年間固定資産税が未納の不動産に関しては、地方自治体の公有不動産とし、再利用もしくは処分を行う。
固定資産税が納入されていても、10年間居住していない不動産に関しては地方自治体が適正な価格で買い上げ、これも再利用もしくは処分を行う。ただし別荘等の利用の実績があれば、対象外となる。
その7「外国人への不動産売却を禁止する」
今後は外国人への不動産売買を禁止する。ただし、外国人が日本人に売却することは認める。また賃貸に関しては制限しない。この政策は、外国人による買い占めや不当な投資を防ぐためである。
その8「消費税を廃止し、高額商品に関しては物品税を課す」
生活必需品となる商品は原則無税とする。
物品税は、1000円以上の商品は10%
1万円以上の商品は20%
100万円以上の商品は25%
1000万円以上の商品は30%とする。
ただし、1000円以上の商品であっても、生活必需品と認定された商品は無税とする。
その9「自動車税は物品税のみとする」
今までの自動車取得税・重量税は廃止する。また、毎年の自動車税も廃止する。売買の際の物品税のみとする。
その10「ガソリン・軽油の税金は一律10%とする」
ガソリン・軽油は生活必需品と考えられるが、国民全員が必要としているわけではないので、一律10%とする。今までのガソリン税等は廃止する。
その11「高速道路を完全ETC化し、渋滞解消を図る」
全国にある高速道路・有料道路を完全ETC化し、渋滞解消を図る。
その12「高速道路料金は年間の定額制とし、その収入で高速道路の新設・維持を行う」
高速道路料金は車種別の年間定額制とする。料金は年度毎に見直すが、当初は
軽自動車・二輪 1万円
小型自動車 2万円
普通自動車 3万円
商用車・貨物車 4万円
大型商用車(10t以上) 5万円 とする。
※高速道理が少ない沖縄県では自家用車を利用する場合は無料とする。
ただし、商業車やレンタカー利用は年間定額制の対象となる。
その13「所得税は累進課税とする。所得税の対象は総所得に対して課すものであり、必要経費及び各種控除は一切認めない」
所得税に対しては、単純明快な制度とするために、今までの複雑な控除等は一切廃止する。累進課税の税率は検討課題であるが、次の税率を基本とする。
年間総所得 100万円未満・・・・ 1%
1000万円未満・・・・10%
1億円未満・・・・20%
1億円以上・・・・30%
法人税に関してもこれに準じる。
という本が出版されたのだ。
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