第2話
退屈でそれでいて肉体的心理的に負荷のかかる時間が僕の上を過ぎていく。労働中の僕を言葉として端的に言うなら、産業用ロボット(生)といったところだろうか。
ベルトコンベアで次々と運ばれてくる自動車のエンジン。これに必要な部品を手早く正確に取り付けて、軽く目視で検査してから次の作業者に流していくのが僕の仕事だ。要するにライン工である。
流れ作業の代表格みたいな仕事で、作業手順と作業スピードに慣れてしまえば後は惰性で動けてしまえる。派遣社員である僕に相応しい下っ端な仕事だ。
技術が進歩して産業用ロボット(真)の性能が向上し、コストパフォーマンスが上がって安価に導入できるようになれば、あっという間にお払い箱になるだろう仕事だ。こういう点でも僕には未来が無いと思えてくる。
ああ、そういえばいつかニュースかドキュメントで見たが、今後十年から二十年でロボットや人工知能の性能が上がり日本の労働人口の半数近くが代替可能になってしまうという話があった。そうなると僕も失業だろうな。お先真っ暗だ。
この話をしていた時に出演していた司会者が、ロボットには出来ないクリエイティブな分野がより重要になっていくと言っていた覚えがある。なら、そのクリエイティブな事が出来なかったり、その分野で成功できない人間はどうすれば良いのだろうか? 死ねってか? それとも売れない芸人みたいな生活をしろというのだろうか? 労働人口の半分が売れない芸人の国、日本。そんなフレーズが浮かんできたぞ。
頭の中で暗い未来を想像しながら、手と目だけは作業をこなしていく。こういう風に考え事をして気を紛らわせないとライン工の作業は精神的にキツい。
あっちこっちから聞こえる工場内の騒音は耳栓が必要なほどだし、鼻から入る空気には機械油や溶接溶断で熱せられた金属の臭いがするし、ずっと立ちっぱなしの足は疲労が溜まっていく。肉体的にはそれほどでもないが、精神的にはかなり辛いのがこの仕事だ。
作業中はあれこれと頭の中で想像を膨らませてそれを弄ぶことで精神的苦痛から逃れている。僕がこの手の仕事をするようになって自然と身についた方法だ。
「――――?」
「―――!」
隣にいる作業者がさらに隣にいる作業者と親しげに話をしながら作業をしている。何を言っているかは分からない。喋っている言語が日本語ではないからだ。
昨今では珍しくもない外国人労働者だ。顔立ちは日本人だし、名前にもカトウなる日本の名前が入っている日系の同僚。確かペルーから来ていると聞いた事があるから、こうして喋っている言葉はスペイン語なのだろう。
作業中の気を紛らわせるために気心の知れた相手と話をするのが彼らのやり方らしく、作業中にお喋りを始めるのは良くある光景だった。僕としては騒音が増えて不快になるだけだ。何を言っているか不明な言葉でお喋りをして、ゲラゲラ笑う光景は精神的に苦しい時に見るとキレそうになってくる。
心が狭い、器が小さいと言われるだろうが構わない。そんな精神的余裕はとうの昔に擦り切れている。もちろん、現実には何も言わずに黙々と作業をするだけだ。口汚い罵詈雑言は内心だけに留めておく。このCabránなSudacaどもめ……何を言っているかはググれ。そして身近なスペイン語圏の人には絶対言わないよう気をつけよう。殴られても責任は持てない。
程なく工場内に設置されたスピーカーから終業のベルが鳴る。今月は工場の生産数が抑え気味になっており残業時間が少ない。今日は残業無しで、定時上がりになっている。稼ぎたい人間にとっては不満だろうが、時間が欲しい僕にとってはありがたい日だ。
終業のための清掃作業をして、作業服から私服に着替えている間に磨り減っていた精神が急速に回復していくのが自覚できる。学生なら授業が終わった時の解放感が分かるだろう? 個人的な感想だけど僕の場合はその感覚の倍の解放感を感じている。それだけ仕事中の抑圧感が酷かったのだ。
親しい人間のいない僕は別れの挨拶を同じ部署の人間だけに言うとさっさと帰る。人付き合いには煩わしさを感じる身のため、仕事場では極めてビジネスライクに過ごしているのが僕のスタンスだ。仕事が終わっても作業場でだべる趣味は僕には無い。
駐輪場に置いていた自分の自転車に跨りあのアパートに向けて漕ぎ出す、のが何時ものパターンだけど今日は少しルートを変えてある場所へと向った。
「――よし、誰もいないな」
到着したその場所は街外れを通る鉄道の橋の下。フェンスで囲われアスファルトで舗装された空きスペースになっているので、週末になるとスケボーやインラインスケートをする若者が集る場所だが、平日の夕方だと街外れなのと幹線道路から離れているのもあって人気はとても薄くなっている。つまり人目を避けてあれこれとやらかすには好都合な立地条件を備えているのだ。
自転車を橋脚近くに止めて、改めて周囲を見渡して人目が無いのを確認する。最近の都市部だと街路にも防犯カメラが設置されるようになったが、この周辺だとまだ設置された様子はない。――うん、大丈夫だ。
良く確認してからスマートホンをポケットから取り出し、メイン画面を呼び出す。そこに浮かぶ『Angel War』のアイコンに指を伸ばしタッチした。
それだけで転身が始まり、一瞬で終わる。時間にしてまばたき一回にも満たないわずかな瞬間だ。
「この感覚は結構良いかもな」
筋張った手が、瑞々しい繊手に変わっているのを見て昨日までの出来事が夢や幻ではなかったと改めて確認できた。手で自分の顔を撫でて、顔の造形確かめれば少女のほっそりとしたラインが触覚として伝わってくる。さらに着ているシャツとチノパンも丈を余らせて、靴もブカブカになり体が縮んでいるのが分かった。
変身する時に胸の内から湧き上がってくる得も言えない高揚感は、なかなかクセになる気持ちの良さで僕はだんだん好きになってきている。
先週末にこのアプリ『Angel War』で変身をした僕は、その後の土日の休日を使って色々と調べ、何度か変身と解除を繰り返し検証を重ね、これがどういう物なのか理解する事に努めた。
告白するとその時の僕はかなり興奮していた。考えてもみて欲しい、こんな非日常の面白そうな出来事が向こうからやって来たのだ。しかも可憐な女の子に変身ときた。正直かなり興奮した。そして今もその興奮は続いている……ああ、そうだよ一応性転換ものでお約束な『確認作業』は一通りすませたさ、二次元オタではあっても手近に三次元があれば手に取る事もあるだろう? つまりそういうことだ。もう絶食系は名乗れないな。
そんな風に色々な意味で興奮しながら休日の二日間を使ってこのアプリを調べ、その成果も幾らか出ていた。
まず、この『Angel War』を起動させることで僕の肉体は少女に変身する。アプリにあったヘルプ機能による説明では『天使体』と呼称されている。
この『天使体』は幼い少女の見た目とは裏腹にかなりの身体能力を備えていて、土曜の深夜に人気のない場所で跳んだりはねたりしてみたけど、跳んだ距離が半端無い上に息がほとんど上がらなかった。スタミナも相当なものらしい。
次にスマートホンに表示された『Angel War』のホーム画面から装備の項目を選んでタッチする。そうすれば事前に登録していた装備が、ダボダボになった私服の代わりに僕の体を覆う。この装備も一瞬で終了、どこぞの宇宙刑事とタメを張る早着替えだ。
ただ宇宙刑事とタメを張ると言ったが、変わった僕の服装はメタリックなスーツではない。ぱっと見ありふれた服装に見える格好だ。黒い革みたいな質感のスリムパンツにシャツとチョッキ、その上にパンツと同色同質のライダースジャケット。色彩はモノトーンになっており、変身モノにありがちな派手さは全く無い。アニメで見かけるフリフリでブリブリな魔法少女の服装だったり、体のラインがもろに出るピッチリスーツではなかったことに胸をなで下ろすべきだろうが、地味すぎるのも考えものだ。
ただこの装備は初期装備で、ホーム画面にある『装備購入』の項目から新しい装備を入手できるらしい。その時必要な対価は『BPバトルポイント』と呼ばれる通貨だ。今の僕のBPは0《ゼロ》、当然何も購入は出来ない。初期費用もないのがコレの仕様みたいだ。
さらに装備というのは服だけに限らず、『武器』も当然の様に存在していた。その武器の感触を掴むのが今日ここに来た目的になる。
もう一度周囲を見渡して人目が無いのを再確認する。今から取り出す『武器』は一目でヤバイと分かる代物だ。よくある変身モノのヒーローやヒロインみたいなファンシーなステッキやらメカメカしいガジェットではなく、もっと露骨で生々しい代物だ。
ジャケットの中に手を入れて、脇の下に吊している『ホルスター』からそれを引き抜く。大きさとしては小振りでも、金属の塊なだけあって手にはズッシリとした重みが感じられる。ジェケットの下から抜き出すときに見える銀色が目に鮮やかに映った。
一応オタクな知識に加えて、休日中にネットで調べたお陰で手にしている物の名称は分かった。『シグザウエルP230』、小型の自動拳銃であり、銃を始めとして武器の類になにかとアレルギーなこの日本では目にする機会の少ない本物の銃だ。
最初にコレを手にした時は驚き、同時にゾクゾクとした感触が背筋を走った。ああ、改めてこの銃を手にしてそのゾクゾクが理解出来る。法律を犯している背徳感に加え、この小さく丸っこい銃にどれだけの威力があるのか想像してワクワクしているのだ。
この銃が本物なのは休日中に分解して調べて分かっている。銃本体の構造も弾倉に入っていた弾薬も本物。然るべき手順を踏んで引き金を引けば銃口から弾丸が飛び出ていくだろう。ただし盛大に派手な銃声を鳴らしながら。
いくら平和ボケなどと言われる日本でも銃声が鳴れば警察が駆けつける。それだけは避けたい事態のため、今日まで発砲は控えていたのだ。
まず橋脚に近付いて何時も通勤用に使っているリュックサックからマジックペンを取り出す。これはライン作業中に不良品が見つかった時に不良箇所をマーキングするためのもので、仕事場には常に大量にストックされている。一本程度拝借してもバレないし、仮にバレても問題にならないだろう。
マジックのキャップを外してスプレーアートまみれの橋脚にフリーハンドで歪んだ丸印を大きめに描く。直径50㎝くらいの赤い丸、これが的だ。
的が出来たらそこから大体10mくらい離れた場所に移動して、的と向かい合う。手にした拳銃のスライドを引いて初弾を装填、撃つ直前まで引き金に指はかけない。銃口の向きは常に意識する。オタク知識とネットで収集した知識を動員して手にした拳銃の扱っていく。
胸の内側では心臓がバクバクしているのが分かる。緊張と興奮で鼓動が早くなっているのだ。落ち着け、落ち着け、興奮して見落としがあったら目も当てられないぞ。あ、耳栓し忘れた。射撃競技では銃声で耳を痛めないよう耳栓をするのは知っていたからマジックと一緒に工場からワックス処理された綿製の耳栓も持って来ていた。これも安物の使い捨てで、工場ではストックが沢山ある。持って来ても問題ない物だ。
耳栓をして、もう一度周囲を確認する。人気は相変わらず無し、オールクリアだ。後は待つだけ。
程なく待っていた時が来た。耳栓をしていても聞こえる規則的な走行音、頭上のレールが振動する音が響く。列車が来たのだ。それに合わせて手に持った銃を構える。オタク知識を動員して、両手でキチンと保持する。銃のフロントサイト、リアサイトで狙いをつけて橋脚に描いた丸に銃口を合わせる。
そして列車が頭上を通過、耳栓をしていても響く騒音の中で射撃を開始。
手に伝わる衝撃、目に入る真っ赤な銃火、列車が通る騒音の中でも確かに聞き取れる銃声が僕を際限なくハイにさせていく。撃って、撃って、撃ちまくる。
列車が通り過ぎるまでに弾を撃ちまくり、気が付けば拳銃のスライドは後退した状態で止まっていた。全弾撃ち尽くした状態、スライドストップがかかってホールドオープン、端的に言うと弾切れだ。
時間にして10秒もないわずかな時間、弾数にして7発、けれど僕は深い深い絶頂を覚えた。もしかしたら実際に下半身も濡れているかもしれない。
的にした丸印に近付いて成果を確認してみる。
「酷いな、こりゃ」
思わず口に出てしまうくらいに成果は思わしくない。50㎝くらいの円の中に着弾したのは三発ほど、後はその周辺に散らばっている。
弾が当たった箇所に手をやってみるとコンクリートが弾丸で抉れているのが感触として伝わる。これが僕が撃った確かな証と思えば変に感慨深くなってきて腕の悪さは気にならなくなってきた。なに、人生初の射撃というだけだ、ここから練習を積んでいけば良い。
握っていたグリップ部分から空になったマガジン抜き出して、しげしげと観察する。扱った事があるエアソフトガンとはまた違った感触に感慨深くなっていた。考えてみれば向こうはBB弾の他にガスを充填しておくボンベがあり、対してこちらは弾薬とバネがあるだけだ。空になるとこちらの方が意外と軽かったりする。
おい、弾の補給はどうしたって思うだろう? もちろんアテはある。だからこそ練習として遠慮無くぶっ放しているのだから。
「あ、本当にヘルプ通りになった」
手に持った空マガジンが細かな粒子に分解されて、手に感じていた重さが消える。空マガジンは空気中に溶けるようにして消えて後にはチリ一つ残さない。地面に目を移せば、射撃したときに飛び出ていた空薬莢もマガジンと同じく細かな粒子になって跡形もなく消えていく。
ヘルプ画面に説明されていたとおりになった訳だけど、実際に目にすると現実離れしていて今一つ実感が持てない。思わず空マガジンを持っていた手を握ったり開いたりして感触を確かめてしまう。後、オタク的な意見だけど、空薬莢や空マガジンの再利用は出来ない仕様になっているみたいだ。そこが少し残念に思う部分だ。やってみたかったんだ、ハンドリロード。
そして代わりの弾薬はどこかというと、シグと抜き出したホルスターとは反対の脇の下に手を入れれば、そこにも小さく硬い感触が二個ある。そこがマガジンポーチになっていて、弾薬がフルに込められたマガジンがスタンバイされている。
ジャケットの下、ドレスシャツの上にホルスターとポーチがセットになってサスペンダーの左右にまとめられている。これも装備の一つだ。見た目としては海外ドラマで見る私服警官だろうか? うん、これも良いね。
マガジンポーチから新しく弾の詰まった弾倉を引き抜いてシグに差し込み、スライドストップを解除すれば初弾装填で射撃できるようになった。
で、もう一度マガジンポーチを見るとそこには二個の予備マガジンが最初と同じように存在している。二個ある内の一個を取ったのに、二個に戻っているのだ。
「なにコレ怖い……ネタじゃなくてガチで」
もちろん理由はヘルプ画面を読んで知っている。色々と説明が細かく書かれていてヘルプ画面には本当に助けられているな。
要するにコレは一種の無限バンダナみたいなものだ。銃本体の装弾数こそ限りはあるけど、こうして予備のマガジンはポーチを通じて絶えず補充される仕組みになっているのだ。ただし、クールタイムみたいなものがあって、一度抜き出してしばらく時間を置かないと次のマガジンが補充されないのだ。
このクールタイムは武器の種類ごとに設定されているらしく、このシグの場合は5秒になっている。この短さは初期装備だからだろう。それに良く考えると戦闘中の5秒は結構長い気がする。だからこそポーチが二個用意されているとみた。片方がクールタイム中でももう片方から抜き出せばいいのだ。
とはいえ、ヘルプ画面のお陰で知ってはいても現実に超常現象を目の当たりにすると薄ら寒く感じるものだ。変身とかしておきながら今更かよ、と言いたくなるだろうがソレはソレ。理屈じゃねーんですよ。
でもでも、これの無限バンダナならぬ無限ポーチのお陰で弾の事を気にせずにパンパカ銃を撃てるのはありがたい。どこから弾を持ってきているのか、代わりに何か持っていかれるのか、とか説明されていない部分を気にしだしたら更に怖いものがあるけど、気にしない方向で行こう。
「でも、待てよ」
気になる事があって、マガジンポーチからさらに一本マガジンを抜く。そして5秒待って、ポーチの空になったところを見ると新しく補充されたマガジンがある。コレも抜き出す。これで新しく抜き出されたマガジンが二本。今度は二本あるマガジンポーチから二本同時に抜き出す。これで四本。
何がやりたいかと言うと、マガジンが何本まで抜き出せるか試したくなったのだ。普通、ゲームとかだとこの辺り制限がかかったりするものだが今のところ何本でも抜き出せている。これは抜き出せる本数に制限でもあるだろうか? 制限を越えるとどうなる? ポーチが空になる? 抜き出した分、前の物が消える? この辺り検証する必要がある。
――結論を先に言おう。検証出来なかった。抜き出しても抜き出しても次のマガジンが補充されていて、気が付けば弾薬がフル装填されたマガジンが三十本程になっていた。後始末を考えた場合、これらマガジンの存在は無視できないためやむなく検証を中断したのだ。いや、マジで怖いよ、どうなっているんだ?
どっちゃりと溜まったマガジンは、通勤用に何時も背負っているリュックサックに詰めて射撃練習を再開する。幸い小型拳銃用のマガジンのため、三十本あってもリュックに収まった。当面はこれで射撃練習でもするとしよう。
そうと決めたら、次に頭上を通過する電車を待ちながらスマートホンをいじって『Angel War』の情報を収集していく。僕はまだまだこのアプリのことを知らない。他にどんな機能が隠されているのか、怖いと同時に気持ちがアガってくる。
地方都市とはいえ夕方のラッシュはある。次の通過電車は10分とせずに来るだろう、なんて考えていた時だ。手に持っていたスマートホンが急に着信音を出して振動した。
流れる着信音はメールにも通話にも設定していない聞き慣れない音だ。液晶画面に映っている『Angel War』の画面が切り替わり、緊急と称してある情報が表示された。
『エネミー警報:界獣エネミーが探知されました。付近の天使は戦闘準備をして下さい』
まあ、予想予感はしてましたよ? だって、やたらと高い身体能力に銃器ですよ、明らかに何かと戦う事前提じゃないですか。『BPバトルポイント』なんて名称まで使われているのだから戦ってポイントを稼ぐのは確定ですよ。
だけどね、予感はしていてもこんなにすぐとは思わなかったよ。もう少し事前に通達とかあるんじゃないかな、と思ったけど……ああ、これが事前通達か。
うん、緊張しているね。だからこんな軽い調子になっている。何かと戦う、何かを殺し、何かに殺されるかも知れない。その何かというのも分からない。
怖い? 恐ろしい? その何かを殺すのが嫌だ? いやいや、この胸に湧き上がる感情は『楽しそう』だ。もうすぐ出発する絶叫マシン、これから観賞するホラー映画、スタートボタンを押す直前のゲームのバイ○ハザード、スリルがある未来に僕の胸は高鳴っているのだ。違うところがあるとすれば、身の安全は全く保証されていない点か。なのにそこにさえスリルを感じてしまっている。
戦闘準備というならもう出来ている。何が来ても対応できるようにスマートホンはしまい、リュックは背負い、手には武器のシグだけ握る。出来るだけどちらかの手は空けておいた方が対応しやすいと考えたからだ。
さらに背後からの襲撃も考えて橋脚に背中を預け、上下左右、できるだけ視野は広く取って腰を落とした。これでとりあえず不意打ちでやられる事はないと思いたい。
何が来る? どう来る? 湧き上がる緊張感とスリルに僕の感情は楽しさで一杯だ。口の端が吊り上がっているのが自分でも分かるくらいだ。
やって来る何かに身構えている時だ、唐突に世界が『裏返った』。
何を言っているのか訳が分からないと思われるだろうが、これは酷く感覚的で語彙が豊富とは言えない僕ではこうとしか説明が出来ない現象が体を襲った。
周囲の風景は変わらず夕暮時の街外れ。だが、さっきまでいた場所とは『ズレている』『裏返っている』という感触を直感として感じ取れる。現に、さっきまで耳に入っていた周囲の雑音は消え去ってやけに静まりかえっているのだ。
人気のない街外れでも環境音は多種多様だ。遠くから車両が通過する音、鳥の鳴き声、遠くの工場にある機械音、人家から聞こえる生活音、普段意識していないだけで無数の音が環境に混ざり込んでいる。それらの音が唐突に消え去ってしまった。聞こえるのは僕が出す呼吸の音、鼓動の音だ。耳が痛くなるほど静かになってしまった。耳の奥からキーンと血流の音さえ聞こえる。
なんとなく理解できる。よくアニメやラノベとかで見られる不思議空間ってヤツだろう。結界とか、封絶とか、ミラーワールドとか、どれだけドンパチしても周囲に迷惑がかからないご都合空間だ。
いいね、ますますそれらしくなってきた。ともあれ、何が来るかはやはりまだ分からないので息を潜めていた方が良さそうだ。
橋脚に背を預けて息を潜めること数分。静まりかえったこの空間に僕以外の音を出す何かが現れた。耳栓をしていても聞こえる音量。音の発生源は僕の背後、橋脚の裏側だ。
この後ろはすぐに川になっている。水音も聞こえるから『何か』は川から上陸してきたのだろう。こちらの存在を察知されているか不明だけど、静かにしているのに越したことはないのでゆっくりと橋脚から顔を出して向こう側の様子を窺った。
……いた。その『何か』は、川に半身を浸けて頭を水に突っ込んでいる。見た目は犬に見える。大きさも形状も犬と言うべきだろうが、一般的な生物とは思えない。言語化に難しいのだけど、犬の形状をして犬みたいな動作をしているくせに生物とは思えず、犬のCGが現実に飛び出てきたような所感を『アレ』に持った。
まともな存在じゃない。それは分かった。あれが警報で知らされた『界獣』なる存在なのは間違いないだろう。では、僕はどうする?
あの犬みたいに見える界獣は僕に気付いている様子はない。このまま息を潜めていればやり過ごせるかもしれないだろう。この手に持っている銃でアレを倒し切れる自信もない。何しろついさっき初めて銃を撃ったばかりだ。武器に不慣れなことこの上ない。
ヘルプ画面では、天使には戦闘義務というものがあって、界獣との戦いから逃げ続けているとペナルティが与えられるとあった。だけどあくまで『逃げ続けていると』だ。不慣れな初回での逃亡程度でペナルティが課せられるとは思えない。
なら、この場は退いてある程度武器の扱いに慣れてから挑むべきだろうか? ――いや、それじゃあ面白くない。この場この時に出会った敵に何時また会えるか分からないなら、戦わないと損だろう。あれだ、その瞬間に思った気持ちを大事にしたいのですよ僕は。一期一会ってヤツですかね。
と言うわけで、戦闘決定。負けた場合? 死ぬだけだろうね。けれどソレが何か? 僕には死んで悲しむ人などいねーのですよ。ビバ、身軽な身の上。
身を潜めている橋脚を盾にして銃を構える。オタ知識を動員した遮蔽物を使った射撃法なんだけど、これって銃を持った人間同士の戦いが前提の構えだ。向こうは明らかに人間じゃないし、飛び道具を持っている様子もない。構えてから思ったのだけど、割と頓珍漢だっただろうか?
いやいや、一応橋脚は盾になるし、銃を撃つときも橋脚は支えになって命中精度も上がるはず。なにより身を隠すのは間違っていないはず。だからこそこうして不意打ちが出来るのだから。
界獣は変わらず川に頭を突っ込んでいて、こちらに気付いた様子は無い。不意打ちするなら今のうちだ。
相手との距離は10mほど。奇しくもさっき練習で撃っていた的と同じくらいの距離だ。当たるだろうか? いや、当たるまで撃つか。さっきの結果を考えれば二、三発は当たるはず。その後で当たる距離まで近付けばいい。
手にしているのは生き物を殺せる武器、向ける相手は生き物かどうか微妙だけど生き物らしき何か。普通の感性なら躊躇うところなんだろうけど、僕は不思議とそういう気持ちにならず、ごく当たり前のように銃口を界獣へと向けた。
で、間を置かず発砲。二度目の射撃の引き金はとても軽かった。
――ッ!!
命中。腹に弾を受けた界獣は、犬の見た目とは違って表現が難しい悲鳴を上げた。さらにもう一発、さらに一発と追い討ちを重ねる。
このシグザウエルP230に使われている弾は9㎜ショートとか呼ばれている小さな弾薬だ。その小ささに相応しく弾の威力も低い。対人用ならそれでも充分だろうけど、相手は界獣とかいう良く分からない何かだ。死ぬのを確認するまで追い討ちした方がいいだろう。ゲーム的に考えても初期装備にそれ程攻撃力があるとは思えないからな。
さらに一発撃つ事に界獣に近付いて命中率を上げる。約10mの距離で約50㎝範囲に三発しか命中させられない程度の腕しかないのが今の僕だ。なら命中率を上げるなら距離を縮めれば良い。良く分からない界獣に近付くのは一瞬躊躇うけど、良く分からないからこそ一秒でも早く殺す必要があるし、そのためには一発でも多く弾を当てなくてならない。そう考えた上で距離を縮めている。
橋脚から姿をさらして界獣に近付く危険を冒した甲斐はあって、撃つ弾のほとんどが界獣に命中する。そして界獣まで1m位まで距離が縮まって銃がホールドオープンになった時には界獣はピクリとも動かなくなった。
油断はしない。空マガジンを素早く落として、背中に手を回しリュックに詰めた新しいマガジンを差し込んで装填。銃口は界獣に向けたままだ。死んだフリをして襲いかかるなんていうのもありそうだからだ。
銃口を向けたまま、一歩近付いてつま先で軽く界獣を小突いてみる。反応なし、確かに死んでいるようだ。
それが分かった途端、口から大きく息が漏れて肩から力が抜けていく。思いの外僕は緊張していたらしい。その緊張感が抜けるタイミングを見計らったかのようにポケットに入れたスマートホンが鳴る。また『Angel War』からの通知かと思い急いで取り出す。
『界獣:犬型α種を撃破――BP1ポイント獲得』
メイン画面にそんな表示がされていた。やはり僕の推測通りこの界獣を倒してBPを入手するのが『Angel War』の基本的な行動らしい。しかしこのBP1ポイントというのがしょぼいのか、良い方なのかはまだ分からない。相場とか知りたいものだ。
そんな風にスマートホンを見て考えていると、倒され転がっていた犬型α種なる界獣に異変が起こる。パラパラと形を崩していき、細かな粒子になって宙に溶けていく。ちょうど空マガジンや空薬莢が消えていくのと同じプロセスで跡形もなく界獣の体が消えていくのだ。なるほどね、死体の始末が不要とかってすごく便利だ。
確かに緊張したけど、終わってみれば何事も無い。ゲームをやっているような感覚で、けれどゲームよりも新鮮な充実感が湧いてくる。うん、いいね。
こうして生き物『らしきモノ』を撃ち殺すとはるか昔の出来事を思い出す。小学生あたりの時、僕は近所で密かに生き物を殺して回る陰湿なガキだった。
誰にでも一回は覚えがないだろうか? トンボの羽根をむしったり、アリの巣に水を流し入れたり、カエルの尻にストローを刺して膨らませたり、そういった身近な生き物を虐める遊びだ。僕の場合はそれが少しばかりエキサイトしていた。
犬にチョコレートを食べさせて悶えさせ、ネコにレモン汁をぶっかけ悶絶させ、ハトを捕まえて羽根をむしり取って生きたまま火にかけて火刑ごっこをし、カラスをエアガンの的して楽しむ。そんな事を小さい頃の遊びにしていた。もちろん一人でだ。寂しい奴とか言わないでくれ。一人でやっていたからこそ最後までバレずに済んだのだから。
最終的にネコやハトを何匹も殺して回り、その死体が近所の人に見つかって騒ぎになった。結果だけ言うなら僕の仕業だとバレずに騒動は終わったが、以来動物虐めは止めた。今の界獣退治はその動物虐めに通じるものを僕は感じている。ついでに少しばかりノスタルジックも同時に。
こんな風に昔の思い出に浸っていた隙を僕は突かれた。次に起こった出来事にこちらは対応出来なかった。
「■■■――っ!」
「が、はっ!」
突然の衝撃、視界が強制的に横にズレる、かと思ったら地面に向って落ちる。あ、これは僕が倒れたんだと分かった時にはすでに地面に体が落ちていた。川に落ちなかったのは不幸中の幸いだ。
下が硬いアスファルトなので倒れるとかなり痛い。そしてそれ以上に左腕が痛い。締めつけられるような、突き刺さるような、そんな痛みが複合して襲いかかっている。
痛みとショックでチカチカする視界の中で犬の形をした何かが僕に向って牙を剥いていた。もう一匹同じ界獣がいた。そこまで考えが至ると、向ってくる界獣を避けるため体を倒れたまま回してゴロゴロと転がった。
距離が離れたのを見るやすぐに銃を界獣に向けて撃つ。くそっ、避けられた。さらに二発、三発撃っても避けられてしまう。やたらと素早い身のこなしで右に左に界獣は銃弾を避けていく。銃弾を避けるってファンタジーかよ……あ、ファンタジーだった。
この界獣の見た目は最初の一匹と変わらない。つまり正面からやるとこんなにも面倒臭い相手という訳だ。
さあて、どうしたもんかね。幸い弾は当たらなくても牽制にはなって、距離が離れたので立ち上がって体勢を整える余裕は出来た。銃口を界獣に向けると、奴はそれを避けるように動いている。ある程度の知恵もあるみたいだ。
シグの銃口で犬型の界獣を牽制しながら、頭は今の状況を打破する方法を考える。弾は残り四発、無駄弾は一発も使えない。ダメージは……左腕に痛みが感じられて、界獣から顔を逸らさずちら見すると血が出て指先から血が滴っているのが見えた。一応指や腕は動くから深刻なダメージではないようだ。
不思議だ。いきなりガチで命のやりとりが始まったというのに頭はやたらとクールで凪いだ気分だ。そのくせ下半身が熱くなっている。男の体のままだったら勃起もんだったんだろうな。今は女の体だから濡れるって奴か?
さて、あまり時間をかけて考えされてくれないようだ。界獣の方が痺れを切らして唸っている。見た目は犬なのに唸り声は猫みたいだ。
身を低くして飛び掛かってくる犬型界獣。大きく口を開けてそこにズラリと並んだ牙で僕を噛み砕こうとしている。ハッ、面白い。
それに対して僕は、ダメージを負った左腕を界獣の口へと突き出した。当然、ガブリと噛まれる。
「ギッ! くっ、ははっ!」
噛まれた腕が砕けたんじゃないかと思えるくらいの痛みが脳髄に刺さる。でも、痛みで動きが鈍ることはなかった。界獣の体と密着する。おかしな事に体温は感じないし、生臭さも感じない。やっぱり最初に思ったように普通の生き物と同じように考えてはいけない存在なのだろう。
クソ痛いのに笑いが出てくる。僕はマゾの気はないはずなのに。まあ良いか、とにかくこれで捕まえた。
僕に噛みつくために密着しているのだ。もう避けようがない。右手に持ったシグの銃口を界獣の頭に当てて引き金を引いた。
「あークソ、痛いなこの野郎!」
一発撃ったら界獣の力が抜けたので、左腕を口から引っこ抜く。ズキリと痛む腕に苛立って界獣を一発蹴りつけ、止めの意味も込めて残りの銃弾を全部撃ち込んだ。一発撃つ度に界獣の体が大きく震えるのが面白く、興が乗った僕はリュックから追加のマガジンを取り出してさらに追い討ちをかける。左腕にダメージがあるのでマガジンチェンジが思いようにいかずもどかしい。
ようやくマガジンチェンジ完了。怒りのぶつけどころ目がけて銃口を向ける。
「おら、死ね、くたばれ、死ね、クソが、死ね、消えろ!」
日頃の鬱憤がそのまま噴出して、一発撃つ度に口から悪態が飛び出る。銃のスライドがまた下がり切って弾切れを知らせた。そのタイミングで散々銃弾を撃ち込まれた界獣の体は崩れて消える。
スマートホンが鳴って再び通知。
『探知範囲内全ての界獣を撃破――BP1ポイント獲得』
なるほどね。全部撃破したっていう通知が来ないなら他にも界獣がいるって訳か。つまり戦いになったら周囲への警戒が大切、戦い終わったら残身は大事ってお話か。バトル物の創作物では良く聞く教訓だけど実際に体験してみると中々気が回らないものだね。今日の教訓は一匹倒しても気を抜くな、ってところだろう。
そんな反省点があっても僕の興奮は止まらない。人生初の戦闘、命のやり取り、武器を手にして振るう快感、どれもこれもが鮮烈な体験で、日頃の閉塞感を感じる日常とはかけ離れたスリル溢れる時間だった。
口からもう一度大きく吐息が出た。緊張が解けたからではない。興奮に震えて胸一杯に息が詰まっていたからだ。
こんな風に戦闘後の満足感に浸っていると世界が再び『裏返った』。
「戻った、か」
周囲が急に騒がしくなって、周囲の環境音が戻った。元の世界に戻って来れたのだろう。それとあまり意識していなかったが、臭いも強く感じるようになっていた。多分『あっちの世界』では臭いさえも消えて無臭で、元の世界に戻った事で元々あった臭いを強く感じるようになったのだろう。
僕の立ち位置は直前までいた位置だ。転移前に居た位置に戻る可能性も考えていたが違ったらしい。とりあえず手に持った銃はホルスターにしまい、周囲を窺って人目が無いのを確認する。
うん、大丈夫だ。付近に人影が無いのは変わらず、『向こう』では戦闘があった地点も綺麗な状態のままになっている。『向こう』は本当にご都合主義の塊みたいな空間だったらしい。
となれば、後の懸念は界獣に噛まれた左腕か。不意打ちで一回、盾代わりに使って二回とダメージがあった腕は、こちらに戻る直前に見た時にはボロボロで、力なく肩から下がっている状態だ。痛みはない、余りにもダメージが酷すぎて脳内麻薬とかが出ているせいかもしれない。
拙いな、治療とかで金がかかるのは勘弁だ。最悪なのは後遺症とかが残って腕が満足に動かなくなる事だ。今の仕事は間違いなくクビになる。我ながら早まったことをしたか? いや、ああしないと僕は死んでいた。命か腕かの選択だった。
確認の意味でもう一度噛まれた腕を見ると、不思議なことに指から滴っていた血が消えていて、ダメージのあった衣服も元通りになっている。
まさかと思い、腕を動かして手を開いたり閉じたりして動きを確認してみた。何の支障もなく動き、さっきまであった痛みも無くなっていた。界獣に受けたダメージなど最初から無かったかのように綺麗サッパリとだ。
うわぁ……助かるけれど、怖いなぁコレも。こんな短時間で怪我が跡形もなく、衣服も込みで治っているのはどう考えても異常だ。銃のこともそうだけど、何処から何かが差し引かれていくのか分からないのは結構怖い話だ。
寿命とか、財産とか、あるいはスケールを大きくして全世界の人口とか、星の命とか、そういった何かが知らない内に差し引かれていくかもしれない。もう少し慎重になるべきだろう。帰ったらヘルプ画面を精査してその辺りをよく調べてみよう。
「でも、やっぱり楽しかったな」
そこは否定できない。日常生活では絶対に味わえないスリルと高揚感、命をやり取りする一種の背徳感と快感、これら全てが日頃の鬱屈した閉塞感をまとめて粉砕していた。身も蓋もなく言ってしまうとストレス解消に最高に効く体験だった。酒やタバコを飲んだり、ドラッグをキメたりするよりもずっと健康的で健全だ。
継続的にこれが楽しめるようなら『Angel War』は最高のゲームアプリだ。その辺りの情報を集める意味でもヘルプはキチンと読み込んでおこう。
アプリを終了させる。すると僕の身体は元の男性のものに戻った。このアプリの終了がそのまま変身解除のキーになっているのだ。最後に周囲をもう一度だけ見回して人目が無いのを確認する。
「よし、誰もいないな。帰るか」
あんな生き死にがかかったアクシデントがあったのに、自分の口から出た言葉はあっさりとした口調だった。
怪我の痕跡はなく、撃ち殺した相手の死体もなく、変身を解除すれば凶器の銃もなければ目撃者もない。ここであった出来事は僕以外誰も知らないのだ。興奮するエキサイティングなイベントだったけれど、周りの人間にとっては退屈な何時もの日常だ。そのギャップが僕の昂ぶりを冷ましたのだ。
高架橋の上を列車が通過していく。あの戦いは時間にして10分程度の時間しかかかっていなかったのだ。大音量を上げて真上を通過していく列車を見上げつつ、体から熱が冷めていく感触を楽しんだ。心情的にも身体的にも戦いの熱はこれで引いていった。
それでも胸の中で燻る熱量はあって、それが次への期待が込められたものだと理解している――だから、家路につく僕の口は笑いの形に曲がっていた。
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