スマホ内転移

ミンイチ

第1話

 雨が振っている中、家への道を急いでいた。


 もうすぐ推しの配信が始まるからだ。


 スマホから見ることもできるが画面が小さいし、何より月始めにそれほどのデータ量を使おうとは思えない。


 今日は台風が来ているために普段よりも風も強く、雷注意報も出ていた。


 それでも親から文句を言われないために塾に行っていたのだ。



 湿気や小さな隙間のせいで中までびしょびしょになったレインコートを着たまま走っているうちに家まで10メートルほどになった時、体の周りが少しチリチリした。


 その瞬間、目の前が真っ白になった。




 気がつくと体は半透明な青色になっており、目の前には何かの箱と1〜0の数字と削除、決定、そして「緊急通報」のボタンが並んでいた。


 見た瞬間は既視感はあるものの何かわからなかったが、すぐにこれが何かわかった。


 自分のスマホのロック画面だ。


 体を動かそうとするが、体は動いてもボタンの所に行くことはできない。


 何回か試したがどうにもできなかったから違う方法を試してみる。


 自分が「9」にいると思い込んでみた。


 すると、本当に9の前に移動した。


 移動方法もわかったからパスワードを打ち込む。


 いつものホーム画面が現れた。


 なぜこうなったかはわからないが、今すぐ推しの配信を見るためにパソコンに転送されよう。


 遠隔でパソコンを起動してそこに自分を送る。


 これでデータ量を使わずに配信を見ることができる!


 そう思った矢先、赤い何かが体を縛ってきた。


 体がどんどん縛られて、そこから順番に消えていく。







[今月のレポート]

危険なウェブサイト:○件

ウイルスの排除:1件


『端末のスキャンを推奨します』

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