青春の鞄

鈴木魚(幌宵さかな)

青春の鞄

「おーい」 

 窓の外から声がして、私は窓から声の主を見下ろした。

 同じクラスの田中が白い野球のユニホームに、大きな黒いカバンを肩にかけて、こちらに手を降っていた。

「鈴木ー、ロッカーの俺のカバン取ってくれー」

 私は教室の後ろの木製のロッカーをみた。“田中”とかかれたロッカーの中に学校指定のカバンが入っている。

「なんで持ってかなかったのー!バカなのー」

「うるせい!早く投げろよ、部活遅れるだろ」

 私は露骨に嫌な顔をしながら(田中から見えるかはわからないが)、ロッカーから田中のカバンを乱暴に引っ張り出した。

 カバンは留め具が閉まっておらず、引っ張り出した途端に教科書やら弁当箱やらが飛び出し、床に散らばった。

「はぁあ?田中のバカ野郎」

 私は悪態をつきながら、落ちたものをカバンに詰め込んだ。

 そして、留め具を留めようとして、俊巡した。

「おーい、鈴木ー」

 外から田中の催促の声が聞こえて、私はお昼に購買で買ったメロンパンを自分のカバンから出して、田中のカバンに入れた。

「いくよー!」

 そのカバンを窓から田中めがけて頬り投げた。

 田中は三歩下がって、綺麗にカバンを受け取った。

「部活頑張れよー!」

 私が叫ぶと田中は右手を上げて、こちらにVサインを見せた。

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青春の鞄 鈴木魚(幌宵さかな) @horoyoisakana

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