第18話料亭で

 高級な料亭の一室。彼女達を送った後、私はある人物に連絡を入れて急遽彼女に時間を作って貰った…。


「──と、いう事で彼には男性としての見本になってもらい、女性に対しては本来男性とはこういう人の事を言うんだという認識を持って貰いたいと思っています…」


 彼女は一瞬眉間に皺を寄せ少し間を置いてから言葉を口にする…。


「─あなたの言いたい事は分かりました。そんな男性が存在する事自体、正直に申し上げるとまだ半信半疑ではありますがあなたが言う事なので嘘ではないのでしょう…。その件は信じるとしましょう…」


「ありがとうございます…。では…?」


「ただ…一番重要な事をあなたは話していないでしょう?」


「…重要な事とは?」


「惚けるとはあなたらしくありませんね?精子に決まってるでしょうに?いくらそんな男性が存在したといってもそれが欠陥品であれば男性としての価値は無い事は分かっていますよね?女性が子孫を残す為、人類が滅びない様にする為にはそれは不可欠なモノの筈ですよ?」


「それは確かにそうですが…間も無く…もう、間も無くその時は訪れる筈です…」


「それが欠陥品ならどうするおつもりなのです?軒並み今の男性のランクを考え直すとおっしゃりましたが、時期尚早ではありませんか?」


「…時期尚早とは思いません」


「根拠は?」


「…ありません」


「それでは話になりませんよ?」


「ですが…もご存知ではありませんか?我が国には…いえ…世界中で冷凍精子の備蓄が残り僅かになってきていることを!」


「だからこそ!…ここは慎重に…」


「賭けるべきです!男性を変える事に!彼のモノが欠陥品ではない事に!賭けるべきは今です!」


「…時間が無いのは分かっています。彼のBランク認定について許可しますし、学校生活のバックアップ、配信についても許可しましょう。彼の人となりも分かる事ですしね…。いずれは会わないといけない事になるとは思いますが…。ただ…男性のランクを軒並み下げるのは現段階ではやはり許可出来ませんね…。欠陥品で無い事が分かってからになるでしょう。ランクが低くても数は少なくても精子は提供してもらっているのだから…万が一の場合も考えて置かないとこの国は他の国の言いなりになるしかなくなりますからね…」


「…彼なら変えてくれると私は思っています。そうなれば把握出来てない男性の数も把握出来る様に法も変えれる様になる筈です」


「そうなるといいのですが…」


「私は信じています…」


「その件はあなたに任せるとしましょう…。必要なら連絡して下さい。私が出来る事はする事をお約束します」


「ありがとうございます…」


「それでは私はこれで…。嗚呼…そうそう。念の為を護衛に付けます。何かあってからでは遅いですからね…」


「彼女が護衛してくれるのなら安心です…」


「では…また…」


「宜しくお願いします…」


 彼女が去って行くのを見送ってから私は色々と必要なモノの準備に取り掛かる。この時間帯だ。男性管理局者は全員仕事を終え帰っている。─が、急遽全員呼び出し。何事かと一時騒然となってしまったが事態の説明と彼の写真を見せる事で全員言われてない仕事迄する程ヤル気に満ち溢れている。今日は徹夜になるだろう…。なんなら2日位徹夜でも皆余裕で働くかもしれない…。男性管理局に勤める者全員の気持ちが初めて一つになった瞬間かも知れない…。



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