第39話 創宇が守りたいのは、陣なのか。

伊織は、いつも、創宇の下で、我慢していた。自分が、代われるなら、代わりたいと思っていた。六芒星の陣は、強固で、その守りは、誰もが、からくりを知りたがっていた。表向きは、古城を中心にした古城であったが、真実は、全く異なり、古代の姫が眠る棺が、からくり扉の柱の底にある。何代も、創宇が守り通す姫の骸を見てみたいと思った事もある。だが、それを創宇は、許す事もなく、いつまで、経っても、伊織は、創宇の下である。とって、代わる事などできない。時代は、流れ、幾つもの大戦を乗り越え、六芒星の上に、都市が築かれ、その効力を人々は、忘れ始めていた。古い習いは、魔を退け、人々の生活を守ってきたが、日頃の平和に慣れ、都市の人々は、恩恵を忘れていた。どの家にもあった呪布はなくなり、効力を失っていく。古来から守ってきた呪いが薄れゆく中で、国の外から、国害が忍び寄る。かの感染症も、病薬ではないか。六芒星の効力が薄れ、獣神達も、能力を失いつつある。

「炎龍は・・・」

飢え、乾き。伊織は、唾を飲み込んだ。形自体が、炎の竜ではあるが、災厄が形になっただけで、これから襲いかかる災厄そのものだ。六芒星を守る獣神達に襲いかかるだろう。創宇は、気にする様子もない。逃した栗鼠に気をとられている。創宇が、守りたいのは、六芒星の陣ではない事は、薄々わかっていた。炎龍を阻止するのが先であろう。

「菱王が、捕まえた栗鼠を連れてこい」

創宇は、伊織の思惑通り、菱王に逢いに行くように言った。これで、菱王と合流できる。

「わかりました。すぐ、あの栗鼠を連れてきます」

どうして、あんな栗鼠にこだわるのか。伊織は、創宇の命に従い、菱王のいる場所へと飛んだ。そこに不機嫌な炎龍が現れているとは知らず。

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