第15話 麗しき、冥府の番人
突然、現れた陸羽に逃げる様に言われて、言うがままに、桂華を連れてその場を去ったが、何が起きたのか、理解ができなかった。
「ちょっと、怖い感じがするけど、結構、イケメンだったね」
希空は、能天気に声を上げた。
「もう少し、話をしたかったけど」
踏んではいけない。早く、ここから出るように。陸羽の言葉が、脳裏に蘇る。早く、ここから出るようにと言うのは、この図書館や美術館の敷地の事なのか。
「ねぇ・・・希空」
しばらく考え込んでいた希空が声を上げた。
「考えたんだけど、今まで、ここに来ても、何もなかった。彼が言っていた厄介な物を持ち込んだって」
不安そうあ顔をする桂華に、希空は、明るくするのが務めとばかり、割り飛ばした。
「偶然よ。偶然。気が付かないだけど、今までも、何か、あったかもしれない」
「そうよね。何か、起きていた事から、守っていた人がいたら、気がつかないわよね」
希空の顔色が変わった。
「それって、桂華が、昔あったって話と関係する?」
「おじさんの行方不明事件で、田舎に行った時に、山の古神に、嫁だ言われた・・」
「でも、その時に、そう言われただけど、その後は、何も、なかったんでしょう」
「わからないの・・」
「わからないって?」
「帰宅した日は、覚えているの。だけど、あの日から、時間が経つのが早すぎて。何も覚えていない。気がついたら、都会の大学にいて、変わらず、生活していた」
「本当に、覚えていないの?」
「えぇ・・」
桂華は、自身なさそうに、頷く。
「家で、何があったか、私には、わからない」
「そうね・・」
希空は、言葉が出なかった。T国で起きた事、飛行機の中での事。海外から、戻ってきてから、誰かにつけられているような気はしていた。鈍い自分にも、よくわかる。そして、いつも、来ていたこの地で、起きた様々な事。
「希空。私達が、来たこの場所は、どんな地だったか、覚えている?」
「根拠のない都市伝説って、桂華は、馬鹿にしたでしょう」
「そうでも、ないと今、思ってるの」
桂華は、前を指さした。
「陣から出た途端に待っていたわ」
桂華の示す先には、長い尻尾を持つ、鋭い爪を持つ女性が立っていたからだ。
「ようやく、あって話ができる」
開いた唇の間からは、細い牙が覗いていた。
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