『かくきらい』
やましん(テンパー)
『かくきらい』
(これは、フィクションです。落語みたいなものと、思ってください。)
めったに行かない、駅前のデパートに行こうとしていたときです。
正門の前で、突然、何かが叫びました。
『30ビョウゴにバクハツします。ニげてください。』
そのあたりにいた人たちは、みな、なにがなんだか判らなかったのか、ちょっとだけ行動に手間取っていました。
たまたま、地下に降りようと、階段に取りかかっていたぼくは、そのまますぐに階段をかけ降りました。
すると、あとから、沢山の人たちが、雪崩れ込んできたのです。
なんとか、地下二階まで降りて、そこから、デパートの地下三階まで駆け込んで、物陰に入ったところで、でかい爆発の衝撃が来ました。
地下といっても、核シェルターではありません。
つまり、それほど、頑丈ではないと思います。
地下二階と三階は、広い空間でつながっていました。
沢山の埃が爆風とともに踊るように舞い込み、デパートの商品などが飛び回りました。あたりにいた人々は、ただ驚愕していましたが、幸い付近の天井が崩れたりはしなかったのです。
しかし、電灯は全て落ちました。
非常灯も点きません。
手持ちの放射線警報装置が、ぴーぴーと、『危険』を知らせていました。
まさか、かくか?
実際に、状況が危険なことは、見たら誰でも判っています。
この警報装置は、こういう場合に、あまり、役に立つのかどうかはわからない。
事実の追認だけかもしれないし、高級品ではない簡易型なので、誤作動かもしれません。
しかし、どうやら、核地雷が、全国のあちこちに埋めてあるらしいという、噂はありました。
7年前に、5年でつぶれた、前衛的前政権が埋めたらしいとか。
実際に、かなりの強権政策を取っていましたが、事実無根と、いまの政府は言っています。
国外からの侵入者とかを狙っていたようだと言われますが、良くは判っていません。
自国内に、地雷を仕掛けるだろうか?
とも、言われていました。
現政権は、同じグループながら、改革派ではありますが、前政権との強いつながりがあることは、まあ、常識でした。
しかしそれは、あくまでうわさで、あたまから無い話しかもしれず、あったとしても、埋めた場所がそもそも、はっきりしない。さらに、話しはかなりオカルト化していて、例えば、老朽化とかして勝手に自爆モードになったりもするらしいとか、『にわとり核地雷』よりは、仕組みも破壊力もかなり進化しているらしい、など、わけわかんない話が多数飛び交っておりました。
にわとり核地雷とは、かなりむかし、ある国が開発したもので、寒い冬でも使えるように、爆弾を暖めるために、核地雷内に、にわとりを飼っておくようにしたものだそうですが、実用化寸前で止めたようです。ブルーピーコックと呼ばれます。
『まさか、こんな、繁華街に埋めたのか。』
『あきれたさべー。』
『それは、噂だべ。噂に騙されちゃダメずら。』
『いや、なんでも、核爆弾になるべな。スーツケース核爆弾もあるみたいぞな。』
『うんだ。魚雷もあるし、たい焼き型とか、たまご型とかもあるらしい。』
『うなの、ないだろ。』
『いや、でかい卵型はあった。』
『けが人が、かなり出ているみたいよ。向こうの駅チカはひどそう。』
『たしかに、きのこ雲が上がったらしい。』
とか、いろいろ、回りの人は言っていますが、なにしろ逃げ出すべきかどうかもわからないのですが、真っ暗なので、危なくて動きようもありません。中には、すでに地上に上がった人もあるかもしれません。
暗黒の時間は、永遠のようでした。
やがて、ようやく、明かりが入って、保安隊の人がきて、言いました。
『みなさん、もうしばらく、お待ちください。準備ができたら、みなさんを、救護センターに移動します。』
『救護センターて、なんだべか?』
『強制収容所らしいとか。』
『うんだ。隔離施設とか。』
『まさか。うな、ばなな。アニメではあるまいに。』🍌
それで、
『なにが、あったすか?』
と、誰かが、保安隊のかたに尋ねました。
保安隊のかたが、すかさず、答えました。
『ガス爆発です。』
『カクではなく、ガスか!』
『それは、あるな。』
しかし、なぜ、ぼくの検知器が、危険を知らせたのでしょう。
さらに誰かが、重ねて尋ねました。
『でも、爆破予告機能つきの、核地雷とかの噂もありますぜ。』
すると、保安隊の方が、答えました。
『かくは、きらいです。』
🔥😭💣️
『かくきらい』 やましん(テンパー) @yamashin-2
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます