第4話:邂逅、①

「私の事」

「メ…ネ、なんで…」

なぜ彼女が、なぜメネが。

頭が追いつかない、なんで剣を持っている。

なんで鎧を着ている。なんで、なんで___

「え"あ"あ"あ"っ!」

そこへ上から人影が斧を振りかぶり降りてくるヨーストだった。

振り下げられた斧を彼女はツヴァイヘンダーの腹で受け、身を左へ逸らし衝撃を逃す。

彼はすぐさま右へ転がり、左膝を地につけながら膝立ちし両手で持った斧をメネに向けた。

「大丈夫か、デイビッド!」

「あ…えっと…」

「なんだ貴様は。」

どもるデイビッドにヨーストは問うが、デイビッドはどもってしまう。

対してメネは割って入って来たヨーストに腹を立てているようだった。

「君は彼はの何だ?」

「戦友だ、今日なったばかりだがなっ!」

ヨーストはメネに迫ると下から斧を切り上げたが、メネは後ろに飛ぶと、ヨーストの斧は空を切る。メネはツヴァイヘンダーヨーストに振り下げ、対してヨーストはツヴァイヘンダーを斧の腹で止め、鍔迫り合いに近い状態となる。

「デイビッド、何をしてるんだテメェ!」

「やはりこの国の戦士は数こそ少ないが質がいい!」

「関係のない事言いやがってよぉッ!狂人がぁ!」

デイビッドは2人を交互に見つめる。

(どうしたら、どうしたらいいんだ!)

裏切れない、デイビッドは思った。

家族のような、大切な幼馴染も、自身の命を助けてくれた戦友たちも、裏切れなかった。

剣を持つ手が震える。

冷や汗が出る。

考えついてしまった、二つのかたち。


彼女の血溜まりの上で立つ自分。


ヨーストの首を持つ自分。


彼女を生きて捉えるほどの技術も力も無い。

「舞っていたぞ!黒のッ!」

横から現れた団長はメネに片手でクレイモアを振り下ろす。

途端____、炎が舞った。

デイビッド身は驚き、身を屈める。

メネは左に横にかわす、団長はすかさずメネに火を纏ったクレイモアを上げて水平にふるうが、メネはツヴァイヘンダーの刀身の半分より上で受けると

左に流し、後ろへ跳ぶ。

メネは右手で二重の鍔の間、リカッソを掴むと

右半身を後ろへ引き、団長を獣のような眼差しで見つめる。

対してアメリナ団長は火を纏ったクレイモアを背負うように背中に被せると対抗するようにメネを見つめた。

「用があってね、良ければそこのストロベリーカラーの髪型の身を引き渡せば退却も考えてあげるけど。」

冷たく言い放つメネに団長は、

「そんな真似はできない、一族の掟は破れない。」

「さすが、竜の子だね。」

団長はその言葉を聞くとメネに近づく

背負うように片手で持ったクレイモアを両手で持ち、振り下ろす。

メネはそれを知っていたかのように団長の顔に剣先を突き出すが団長は振り下ろしかけたまま右に身を翻し、翻したままの勢いでツヴァイヘンダーを袈裟斬りのように振り下ろす。

メネは突き出したツヴァイヘンダーを自分へ迫らんとするその剣に突き出したツヴァイヘンダーを逆さに構えるようにクレイモアを受け、鍔迫り合いのような状態になった。

クレイモアに纏われた炎はメネの右手に届くことはなかった。

「やはり貴様のギフトは気持ち悪いッ!」

「酷いな、そんな事を言われるだなんて。

でもさっきのはびっくりしたよ」

「いくら私の"中身"が見えても絶対にしない行動をとれば貴様は対応できないと思ったんだがな!」

「少し私を舐めすぎちゃったねェ!」

両者は大きく後ろに跳ぶ。

メネは構えを解くいた。

「さて、もう余裕がなかくなっちゃったから失礼するよ、デイビッド。」

デイビッドにメネは視線を移してそう言った。

こちらと目を合わせると、口元が緩んませながら言う。

「デイビッドは変わらないな。私、すごく嬉しい。」

「…え」

その言葉を聞いたデイビッドは唖然としたままだったが、メネは踵を返して歩いて行った。

団長はクレイモアの鍔の少し上を左手で持ち、歩いて行くメネを見つめた。

「退却!退却ゥ!」

王国兵の叫び声なのだろうか、それが響いた時、城壁や地上で交戦していた王国兵が引いていった。

すると団長はクレイモアを掲げ、勝鬨をあげ、友軍は皆勝鬨をやまびこのように上げる。

すると団長は俯くデイビッドへ近づく。

「おい、お前はアレの何だ、なぜあいつはお前の身柄を要求した!」

「…幼馴染です。」

デイビッドはそう返す。

団長は予想外の返しに驚くが、どこか納得した形で言葉を紡いだ。

「捕虜や兵士同士の噂で聞いたことがある…

東のフェルムランで誘拐された少女が、黒の剣と呼ばれる大隊長の正体だと…まさか本当だとはな。」

「…」

団長は少し目と目の間をを右手でつまみ俯く。

デイビッドは何も言えず、ただ視線を合わせないようにしていた。

「…お前は…私の、本隊に編入する。

情報は流れないよう、あの紺の瞳の男と頭を打った女も含めてな、拒否権は無い。

これはチャンスだ…あの凶悪な悪魔を止めるためのな。」

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