図書館偏 大学日本拳法で学ぶ問題解決の思想 V.5.2
@MasatoHiraguri
第1話 エピローグ
ある町の図書館での出来事。
その日、13時キッカリに入館した私は、なに気なく新しい腕時計のストップウォッチをスタートさせました(使ってみたかったんですね)。
閲覧席で本を読んでいるうち、いつの間にか周囲の学生たちが消え静かになっていたので、時計を見ると「5:10」という表示。13時に入館して5時間10分経過したということはつまり、その時点での時刻は18:10だったのです。
ところが私は「5:10」という表示を「17:10」という時刻と勘違いしたのです。その日は17:30に退館するつもりでしたので、区切りの良いところで読書を止め、帰り支度をしていました。
すると、この図書館の館長さんが近くの閲覧席に来られて、椅子を正しい位置に直したり、机の上の消しゴムのカスを吹き払ったり、なんてことをされ始めたました。
私はのんびりとした口調で「館長さん自らお掃除とは、ご立派ですね」なんて(冗談ではなく)真にそう思い口にしたのですが、45歳くらいの彼は「はぁー、どうも」なんて言いながら、黙々と各机を回っている。
フト周りを見廻すと、いつもは満席の閲覧席だけでなく、どの書架の通路にも人がいない。これは珍しいこともあるもんだと思い「今日はやけに空いてますね」と、再び館長さんに声をかけました。すると、この物静かな男性は「ええ、まあ。日によって違うんですね」なんて、呟くようにしておっしゃると、そのまま受け付けの方へ去っていかれました。
私は大学日本拳法時代の癖で、ちょっと広い場所に立つと、「パブロフの条件反射」の如く、自然に身体を動かしたくなる(体操をする)。これは誰にでもあることかもしれませんが、日本でも海外でも長距離バスのトイレ休憩では必ず、バスの前で体操をします。
で、その時も「あと10分ほど時間がある」と思い込んでいたので、軽く体操をしたり腕立て伏せをしていました。
すると、そこへ一人の女性職員が近くへ来られて「6時が閉館時間になっておりますので・・・」と言いにくそうに声をかける。
思わず「エッ、6時 ? 5時じゃなかったんですか ?」なんて、間抜けな言葉が口に出る私。てっきり、新しい腕時計をいじっている内に時間設定を間違えたのかと思ったので、受け付けの女性に誤りながら足早に図書館を出ました。
昔「時間ですよ !」(営業開始時間ですよ)という、お風呂屋さん(銭湯)を舞台にしたテレビドラマがありました。
今回、館長さんが「閉館時間ですよ !」と、ハッキリ私に宣告されていたら、この事件(話)は身も蓋もない、単なるボケ老人の失敗談で終わっていたでしょう。
しかし、彼らの「在来種日本人的なる問題対処の仕方」が、inspire(思索を励起)してくれました。このなんでもない事件を、いろいろな次元や様々な位相で吟味し、楽しませて(哲学させて)くれたのです。
2023年8月12日
V.1.3
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V.4.1
平栗雅人
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