EAAT~Evil Alien Attack Team(邪悪異星人攻撃隊)~

宇部 松清

第1話 罪滅ぼしの戦い

 俺の名前は『銀河ギンガマモル』。地球を侵略異星人や怪獣の魔の手から守るために発足した防衛チーム【EAATイートEvil Alien Attack Team=邪悪異星人攻撃隊)】日本支部の隊員だ。


 が、その正体は、銀河の遥か彼方に住む宇宙人である。正式にはN64星雲にある『#▼$%■&@』という星から来たのだが、残念ながら地球人の発声器官ではうまく発音することが出来ない。たまたまこの辺りを観光目的で飛んで(マッハ20)いたところ、逃亡中の異星人を追っていたらしいEAAT隊員・銀河マモルと激突してしまったのである。もちろん彼は即死だった。


 例え遠い銀河の宇宙人でも、こうなればさすがに罪になる。パトロール中の銀河警察を呼んでなんやかんやした結果――、


「責任取ってこの地球人に成り代わり、そいつの寿命分生きて罪を償え」


 ということになったのだった。この手の事故ではよくあるパターンだ。俺達の寿命はこの星の人間よりもずっと長い。


 そういうわけでいまの俺は、地球を侵略異星人や怪獣の魔の手から守るために発足した防衛チーム【EAATイート】日本支部の隊員、銀河マモルなのである。


 さて、EAATに所属してみてわかったのだが、この星はどういうわけだか侵略異星人にめちゃくちゃ目をつけられているのである。ほぼほぼ週一ペースで襲撃されている。だからこそこういうチームが作られたわけだが、所詮は人間。せいぜい追い返すのが関の山。運良く行けば捕まえて銀河警察に突き出せるのだが、彼らが来るまで収容しておく施設だって十分ではない。捕らえた怪獣や異星人の大きさにもよるが、下手したら一体だって入らないのだ。そうなれば厳重注意で泣く泣く釈放である。


 こりゃもう俺がやるしかない。


 こう見えても俺は銀河空手の有段者だし、通信教育で甲種光線技こうしゅこうせんわざ技能者ぎのうしゃの資格も取得した。この星でぶっ放しても問題はない。


 というわけで、他の隊員達の目を盗んで元の姿に戻り変身し、バッタバッタと異星人やら怪獣やらを倒してきたというわけだ。


 人間達は最初こそ「また新しい異星人が出て来やがった」と敵意剥き出しで攻撃してきたが、どうやら味方らしいことがわかるやくるっくると手のひらを返してきた。


 やがて俺は彼らから『ネイバー』と呼ばれるようになった。心優しき隣人、という意味らしい。いや、その単語に『心優しき』までの意味はないだろ。自分達の言葉が通じないと思って適当なこと言ってないか?


 まぁでも『デクノボウ』とか『テッポウダマ』とかそんな感じではないので良いだろう。ただ、自分達が相手の言葉を理解出来ないからといって、向こうもそうだろう、みたいな認識は改めた方が良い。これは俺にも言えることだが。


 というのも、俺は地球人の言語を理解出来るが、どうやら向こうではそうじゃないらしいとわかってすっかり油断し、光線技とか打撃技のネーミングをかなり適当にしてしまっているのである。


 なんかちょっと調子が悪いな、という時は、


デュワッ!キック(小)!

 

 だし。

 良いことがあってすこぶる調子が良い時なんかは、


デュワ――ッ!やったぜ万馬券大当たり光線!


 の時もあった。

 

 一度、酔った勢いでかつての病がぶり返し、


ワシャシャシャ――ッ!俺の封印されし右手が疼くパーンチ!

 

 とかやっちゃったこともある。

 

 しかもそれが翌日朝のニュースで流れちゃった上に、なんかよくわかんないけど良い感じの角度で撮れてたとかだったのか、その日はもう何度も何度も放送されたり、忘れたころに『20XX年、上半期ネイバー名場面特集!』みたいな特番でまーた掘り起こされたりして、あの時はもう布団かぶって叫んでたよ俺。


 ていうかお前達さ、さんざん「地球の救世主」だの「正義の巨人」だの「銀河の彼方からやってきた守護神」だの持ち上げといてこれはないだろ。精神的ダメージがデカいデカい。


 そんで、何が最悪って、何とか俺と意思疎通を図ろうと、『ネイバイリンガル』なる翻訳機の開発を密かに進めやがったことだ。


 そんなもの開発されてみろ、


「やっべ、昨日の酒まだ残ってるわ」とか、

「昨日パチンコで〇万スッちまったからこいつで憂さ晴らしすっかな」とか、そういうのうっかり呟けないじゃん!


 良いんだよ、こういうヒーローはさ、「デュワッ!」とか「シュワッ!」とか、その程度のやつで良いんだって。いきなり「地球の皆さんおはこんばんにちは、ネイバーです。それじゃ今日も張り切って怪獣倒してみたいと思いまーす!」とかしゃべりだしたらもう神秘性とか薄れるじゃん!


 なのにお前ら人間ときたら、飼い犬や飼い猫だけでは飽き足らず、俺までも手懐けようとするのか? おこがましい! なーにが『ネイバイリンガル』だ! 何でもかんでもリンガルしようとすんのやめろ! 戦いのどさくさで開発部の建物ぶっ壊してやったわ。余計なことすんな!


 それでもまだ数ヶ月までは平和だったのだ。

 さんざん襲撃され、毎度毎度あわや地球滅亡?! みたいな危機に瀕しておいて平和とはこれ如何に、という話ではあるが、俺の中ではまだ平和だった。


 現れたのである、別のやつが。

 別の、っていうか、俺と同じ『#▼$%■&@畜生、脳内でも言語化出来ねぇのか』の星のやつが。


 何だ、仲間なら良いじゃん。楽になるじゃん。そう思っただろう? 違うんだ。

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