敏腕女社長は、貴方にオギャってバブりたい

橋立きょも

Track1 城山瑛莉果の長期的な経営判断


//リスナー社長室に招かれ扉を開ける

//SE ドアが開く音


//演技 効率主義なエリカは早口に淡々と無感情に喋ります。

「遅かったわね。ようこそ、社長室へ。どうぞ。そこのソファにかけてちょうだい」


//SE 足音とソファが軋む音

//リスナーが座って声の距離が近づく。


「私の事は……、当然知ってるわよね? 朝礼でも毎回名乗ってるし……。まあ、良いわ」


「社長の城山 瑛莉果(えりか)よ。城山商事、代表取締役社長。城山。よろしくね」


「ああ、良いのよ。あなたは名乗らなくて。あなたの資料はココに全部揃っているから。この後も分刻みのスケジュールがあるのよ。無駄な時間は使えないわ」


//SE 紙束を素早くめくる音


「ふ~ん……。なるほどね……。そう……」


「はい。それじゃ、時間が勿体ないわ。始めましょうか? どうぞ」


//数秒沈黙


「……んん? 何をしてるの? 早くして頂戴。え……? それは、何も理解していない、何が何だか解らないって顔ね」


「え? ASMRで私に癒やして貰えると思ってここに来た? 何を寝ぼけたこと言っているのかしら? 過労でアレになったの?」


//SE エリカが身を乗り出し、椅子がきしむ音

// 声近づき、囁く様に


「逆よ。あなたが私を癒やすのよ。そのために、貴方は私にここに呼ばれたの」


「聞いていないのかしら? 何も? まったく……。はぁ……。貴方の直属の上司、誰?」



//演技 鼻で笑いながら

「ふぅん……そう。マイナス査定ね」


//SE ペンを走らせる音(上司の名前をメモした)


「はあ。まったく……。タダでさえ時間が勿体ないのに。いいわ。説明してあげるから、良く聞いておきなさい。二度は言わないわよ」


「メモは取らなくて良いの? ふん、好きよ。そう言う度胸」


「貴方はね、社長室付、雑務特命二係に任命されたの。仕事は、私のオギャりを受け止め、バブ味を満たす事よ」



「はぁ……。何、その反応。だからメモを取って聞きなさいって言ったのよ。声はいいのに……ビジネスマナーが全くなってないわね」


「ここに毎日出勤して、オギャリ散らかす私のパパになって、私のバブ味を満たすの。解るかしら? 難しくないでしょう?」


「良い? 私はね、城山商事の社員数5千人、連結企業従業員数2万人の模範となって先頭に立たないといけないの」


「プライベートの時間なんて殆どないわ。睡眠時間は一日2時間。今日もここには30分前にマンハッタンから戻ったところよ」


「どういうことか解るかしら? バブ味を感じてオギャらないと、色々と振り切れてアレがアレになってボバ~~ンってなるのよ」


「あなたも嫌でしょ? 自分の務める会社の社長が、奇声を上げてスキップしながら会社中の窓ガラスをバールで叩き割ながら回ってたら」


//SE トゥルル、エリカのスマホが鳴る


「はい。城山。……札幌? そう、わかったわ。そうね……3時間後に。ええ。……ええ。それじゃ」


//SE ピ、通話を切った音


「はあ……。時間、無くなっちゃったわね……でも、40秒ぐらいあるかしら」


//SE 立ち上がり、歩いて、リスナーの隣にギシッと腰かける音


//耳元で囁く

「いいわ……。とりあえず、頭を撫でてちょうだい」


「そうよ。私の頭を。はやく。時間が無くなるわ」


//うっとりと

「ん……ん……」


//えへへ笑いは幼女の様な声色で

「ん……えへへ……あなた、本当に良い声ね……。私のすきな音色……。すごく……落ち着く」


「これから貴方の事は業務上の理由でパパと呼ぶから。貴方も二人の時は私のこと、エリカちゃんって呼びなさい」


「この約束を甲として、あなたを乙として、甲が守られなかった時は一回ごとに今度の乙のボーナスを1割削減します」


「いいわね? ん……。ちょっと。頭撫でるの止めないで。ん……ふふ……えへへ……」


「……ん……はぁ……よし……と」


「それじゃ、私は行くけど。明日も同じ時間にここに来てちょうだい。いいわね」


//SE ピ、と電話をかける音


「城山。45分後に羽田から札幌。用意して」


//SE ピ、と電話を切る音


「いいわね? それじゃ。また明日」


//SE 言い終わらないうちにせわしなく歩いて部屋を出て行く


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る