激情
夜海ルネ
第1話
弓道をやっていると、弓手の親指の付け根あたりの皮が硬くなっていく。この付け根で弓を押すことで、まっすぐ、伸びやかに弓を引けるからだ。この部分の皮の硬さが、弓引きの努力量の証と言ってもいい。
私——
「一番的、三中。二番的、皆中……」
入部したばかりの頃は、希望でいっぱいだった。同学年では10人以上も入部して、これから新しい仲間たちと、一緒に成長して、歩いていくんだという希望が胸の中で膨らんでいた。
「三番的、一中です」
私は内心でため息をつきながら、射位から退場した。三年生にもなって、皆中の拍手なんてまだ一度も浴びたことがない。
弓道の試合は、基本四本の矢が的に
皆中するとその場にいる人から拍手が送られる。四本の矢を全て中てた精神力を讃えるのだ。私には、縁のない話だけど。
「さくらちゃん皆中おめでとう!」
「ありがとう、緊張したぁ〜」
「悠希、また会0秒だったね〜」
苦笑いでさくらに言われた。
私は、“
弓道において、早気ほど致命的な
「うん、もう慣れたよ」
私も苦笑いで返すと、さくらはなぜか一瞬間をおいてから、「今日、一緒に帰らない?」と言った。
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